Yukenz

コンプリシティ/優しい共犯のYukenzのレビュー・感想・評価

3.7
人の運命なんて生まれた時代と場所でかなり左右されてしまうものなんだろう。個人がどんなに頑張ってもどうにもならないことが確かにある。

本作の主人公チェン・リャンは中国の地方に生まれ、貧しい環境から抜け出すために日本に来るが、劣悪な環境に耐えられず思い半ばで職場を離れてしまう。

どの時代にも弱い立場の相手を利用して搾取しようとする輩はいるだろうし、それに甘んじなければならない人たちは歯を食いしばって我慢するか、そうでなければドロップアウトするかしかない。水が高い方から低い方に流れるように、ドロップアウトすればさらに下流に流れるのが自然の摂理というもの。何もしなければ溺れ沈んでしまいかねない。

そこで一念発起して行動に移すにも、背後に誰の加護もない異国の地ではかなりリスクがあり、用心深く立ち回らなければ成功は手にできない。
そういう意味では、チェン・リャンが地方の蕎麦屋に住み込みで職人の弟子入りしたのはなかなか良い選択だったように思う。

とは言え、脛に傷を持つ身としては、忘れた頃に訪れる警察の捜査がどれほどに絶望を与えるものか、想像に難くない。

なかなか社会風刺の効いたテーマだった。
主人公を演じたルゥ・ユウライと蕎麦屋の主人を演じた藤竜也の演技がとても自然で、あたかもドキュメンタリーを見ているような感覚になる。
ご都合主義のハッピーエンドとはならず現実を突きつけられ、外国人受け入れに対する日本のスタンスについて考えさせられる。同じようなテーマの映画が他にもあったように思うのでそちらも見てみたい。
Yukenz

Yukenz