ねっしー

探偵クレア 白蘭の女のねっしーのレビュー・感想・評価

探偵クレア 白蘭の女(2017年製作の映画)
4.0
国内だけでも不思議な魅力を持つ人は大勢いる。
世界で見れば実際に起きていてもおかしくない、蠱惑的なミステリ。

女性としての生き方を知らなかった主人公が、事件を通じて自分のセックス・ジェンダーを捉え直していく姿こそが、この作品の本質かと思います。
他者の本心を見抜くことから、完成された姿に描かれがちな〈探偵〉をどことなく未熟な雰囲気にしているところが面白いです。


犯罪など起こりそうもない町のビーチに身元が曖昧な惨殺死体が発見される。
化粧もせず、もっさりとした私立探偵のクレアは、事件の被害者と見られる女性に共鳴しながら絡まった真実の糸を解いていく。


「エロもグロもミステリーも中途半端」というレビューが並んでいますが、愚かだなと思います。この作品の一番の見所はサスペンスです。

そもそもグロは胸と腕と足と歯を取り除いて身元を特定させない為の犯罪要素であって、1ミリも本作の主眼にはなっていません。

またエロがメインであればレーティング指定で制限がつきますので、期待する場合は映画の選び方を見直した方がいいです。笑

ミステリーに関しては本格的です。
最近好まれるどんでん返しを行いながら、破綻なく事件の真相を解き明かしている時点で中途半端という評価は誤りだと感じます。


その上で、私がサスペンスこそが本作のメインだと言うのは、主人公の視点の変化に焦点を当てて描いているからです。

前述のようにメイクもせず、雇い主の女性や親友から男性を紹介されてもはぐらかす主人公。女性としての生き方を知らなかった彼女が、事件の手がかりを探る中で被害者と思われる性に奔放で美しい白蘭の女性に同調していきます。
はっきりとした色のグロスを塗り、被害者のウィッグを着けて手掛かりを探る彼女は…ネタバレになるのでここからは書けませんが、
彼女は一人のカリスマ的な女性を追いかける事で自分のセックス・ジェンダーを捉え直していきます。

鑑賞者である私達も魅せられる、奔放でカリスマ的な女性を生み出したことがこの映画の魅力だと感じますね。

主人公が現実的な幸せを掴むラストシーンはすっきりとした気持ちになりました。







なんとなく分からなかったから低評価、という方が多いのでしょう。
でも、大味の評価しかできず、わかりやすいエンターテインメント作品しか高評価しないのであれば、いつまで経っても本作のようなインディペンデント寄りの作品を楽しむことはできません。
こんなマイナー作品を観るくらいなので、それなりに映画が好きな方々なのにもったいないです。
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