きざにいちゃん

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のきざにいちゃんのレビュー・感想・評価

4.1
NHKBSP放送録画をHDD整理で発掘。
韓国公開時に記録的な大ヒットになった光州事件実話の映画化である。
韓国人タクシー運転手とドイツ人ジャーナリストのエピソードは知らなかった。

不謹慎で似つかわしくない言葉だが「面白かった」。とても引き込まれたし、涙を堪えられなかった。大ヒットも頷ける。

韓国版『キリング・フィールド』である。
しかし、韓国史の中で重くて大きな悲劇であるこの事件でさえも、韓国映画真骨頂のコメディ、アクション要素の創作をブチ込んだエンタメ味付けにしてしまうなんて…もう反則である。
容赦なく興行的成功を追求する、その貪欲な肉食性と迷いの無さには本当に脱帽するし、言葉を失うほど。韓国映画界は、何と言うか、いろいろな意味でとても強い……

K-POPや韓流映画・ドラマに象徴される今や華やかで豊かな韓国からは隔世の感があるが、たった40年前の出来事だ。歴史と呼ぶにはまだまだ新しい。同じ頃、日本の若い世代はアイドルに声援を送り、漫才ブームに大笑いしていたのだから…

皮肉なシンクロニシティのように、この映画の公開の後、世界のあちこちで同じような惨事が繰り返されてしまっているのはどういうことかと思ってしまう。
香港やミャンマーでもこれと同じようなことが起きているのだろうし、最近ではカザフスタンでもそうだ。
しかも全斗煥元大統領の昨年暮れの死去とか、ちょうど今、問題になっている韓国ドラマ『スノードロップ』など、光州事件に再びスポットが当たっているし…

こんなことを言うとバカにされるだろうが、天というか、見えない何かが我々に警告を発しているように思えなくもない。

全斗煥死去の際、文在寅大統領が「光州事件は今なお解明されない謎が多い」というコメントをしていた。反日ムードの隣人理解の為にも、興味が湧いてしまったので、同じように光州事件を扱った『光州5・18』『1987、ある闘いの真実』もこの機に観ておきたいと思う。