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タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のニコのレビュー・感想・評価

4.2
いつか見ようとクリップしておきながら、泣くのが嫌で封印してたけど、やっと開封してみました。

1980年の日本といえば、原宿でタケノコ族が踊り、なめ猫ブームがおき、SONYウォークマンが発売され、山口百恵がマイクを置き、「もはや戦後ではない」という言葉から二十余年を過ぎて、この世の平和を謳歌していた頃。

同じ年の韓国・光州で起きたのが、この映画で描かれる「光州事件」。軍による民衆の虐殺事件であり、韓国が民主化する一端を担ったと言える事件だそうです。

ソンガンホ演じるのがタクシー運転手その人。人の話をあまり聞かず、カッとしやすく、多少利己的で小心者、だけど優しく人情がある、といういかにも…な市井の人なため、感情移入しやすい。

対するトーマスクレッチマン演じるドイツ人記者。韓国語を喋れない設定なため、感情の起伏が読み取りにくい。根っからのジャーナリストのようだけど、やはり中身はただの人であるための苦悩が切ない。

脇役もあの人この人が出ている中、リュジョンヨル演じる広州の若者との出会いが物語を動かす。歌謡祭に出たいがために大学に入ったのに、このような事件に巻き込まれ…時代が違えば違う人生だったのにって、…切ない。

光州事件だけじゃなく、先の戦争も今起きてる戦争も、時間の経過と共に語る人が少なくなるから、ドラマや映画として描き続けてほしい。

起きたことは無かったことに出来ないけど、起きたことを人は少しずつ忘れてしまう。今の時代の生活が、過去の誰かの犠牲の上に成り立っていることを忘れないようにしないとね。
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