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タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜の一人旅のレビュー・感想・評価

5.0
チャン・フン監督作。

本国 韓国で大ヒットを記録した歴史サスペンスの力作で、韓国映画界を代表する名優ソン・ガンホが軍事政権による民衆の武力弾圧に巻き込まれていくタクシー運転手を力演します。彼が随伴するドイツ人記者をドイツの俳優トーマス・クレッチマンが演じます。

本作は、韓国南部・光州で1980年5月18日から27日にかけて発生し、軍事政権が民主化デモに参加した学生を中心とした一般市民を武力で弾圧し150名以上の死者と3千人以上の負傷者を出した「光州事件」を題材とした歴史サスペンスで、同事件の取材に唯一成功した実在のドイツ人ジャーナリストと彼をソウルから光州に送迎した韓国人タクシー運転手の姿を描いて、韓国現代史の負の記憶を呼び覚ましていきます。

政府軍による卑劣な武力弾圧が起きている光州にタクシーで潜入し、武力弾圧の真実を間近で目撃&体験した二人の男の危険な取材旅を克明に描いた実話を基にした歴史サスペンスで、言葉の通じない二人の光州での命懸けの行動と絆の形成をユーモアを織り交ぜながら描き出しています。

韓国現代史上未曾有の大惨事となった「光州事件」の全貌を、危険を覚悟に実態を取材した実在の人物の視点により暴き出した“歴史サスペンス+友愛ドラマ”の力作で、韓国南部の人々の人情味溢れる人柄が市民を武力弾圧する軍事政権の横暴と対比的に描き込まれて興味深いですし、クライマックスの光州脱出劇では手に汗握るスリリングなチェイスアクションで畳み掛けています。

蛇足)
本作鑑賞後に『1987、ある闘いの真実』(2017)を観ると韓国民主化の歴史がより詳細に分かるのでお勧めします。
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