むらさきの月

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のむらさきの月のレビュー・感想・評価

4.3
米・ハリウッドは『ペンタゴン・ペーパーズ』を
韓国はこの作品を
じゃぁ、日本は?

『タクシー運転手 - 約束は海を越えて』を鑑賞

1980年5月、民主化を求める大規模な学生・民衆デモが起こり、彼らを暴徒ととみなした軍が厳戒態勢を敷いていた。「通行禁止時間までに光州に行ったら大金を支払う」というドイツ人記者ピーターを乗せ、光州を目指すことになったソウルのタクシー運転手マンソプは、約束のタクシー代を受け取りたい一心で機転を利かせて検問を切り抜け、ピーターを光州まで送り届けることに成功する……by 映画.com

韓国で実際に起きた『光州事件』を世界に伝えたドイツ人記者と、彼を事件の現場まで送り届けたタクシー運転手の実話をベースに描いたヒューマンドラマ。前半はコメディ映画かと思うくらい思いっきり笑わせておいて、後半の光州編になると目を背けたくなるシーンが多くなり心を痛めつけてくる…

主人公となるタクシー運転手マンソプ役を名優ソン・ガンホ、ドイツ人記者ピーター役を「戦場のピアニスト」のトーマス・クレッチマン、光州で彼らを助けるタクシー運転手をユ・へジン、英語で彼らを助ける夢多き大学生をリュ・ジュンヨルが演じていたが、今回、クレッチマン以外…主役級にイケメンの存在が感じられず(ゴメンナサイ!これセクハラですね)、どちらかというと、市民に銃弾を浴びせ弾圧する兵士にイケメンが配置されている…ちょっと面白い映画だったかも。というのはおいておいて、登場人物総の運命が一つ一つ丁寧に描かれて、出演者たちが生き生きと命を吹き込んで演じているから、「そんなことありえへん」という場面でも、説得力があるから納得してしまう(爆笑)

こういう作品を見せつけられると
政治問題や社会派問題テーマの扱い方…極上のエンタテイメントに仕上げてしまう韓国映画の才能豊かな表現者たちに
感服せずにいられない

また、本作品をみてさらに驚いたのがビッグな共演者たち
本来なら、
フライヤーに名前があってもおかしくない著名人たち
ドイツ人記者ピーターの光州行を手助けする韓国人記者にチョン・ジニョン
光州で真実を報道しようとする新聞記者にパク・ヒョックォン
光州からの逃走を見逃す兵士にオム・テグ
家賃をため込んでいても焼肉をおごる気のいい大家のコ・チャンソク などなど
若手の実力派からバリバリの主役級までの俳優らが物語の重要部分に脇役で次から次へと登場し、印象的なシーンを創り上げ作品を盛り上げている。もう、ビックリ箱状態で、次に誰が出てくるんだろうとワクワクしてしまった^^

近年、現大統領が関心を持っているということもあり
この事件に関する関心度が高くなっている
未だに事件の全容が明らかにされていないから 
これを機に解明されることを願わずにいられない

真実を伝えること、伝え続けることの「意義」の意味と
伝え続けていく意味の「大切さ」を教えてくれた作品の1本

光州事件のことを知っている日本人がどの位いるかはわからないが
韓国でもこの惨劇は風化しつつあると知り、時の流れの無常さに愕然
でも、数年おきにこの事件をテーマにした映画が今も製作され続けているというコトの意味…この事件を決して風化させてはイケナイという表現者たちの思いは、この先も永遠に続いてゆくような気がする
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