子供の頃、知っている韓国人の名前といえばテレビから聞こえるボクセイキ、ゼントカン、キンダイチュウぐらい。けれどもそういった人物に関わって、暗殺や軍事クーデター、また軍隊と市民の衝突が繰り広げられていたとは当時は知る由もなく。
1980年5月、戒厳令がしかれる中、光州が軍によって封鎖される。東京に駐在していたドイツ人記者は、ことの真相を知ろうとソウルのタクシー運転手を雇って光州への潜入を試みる。新聞報道では「市民による暴動」とだけ伝えられていたが、実際には軍が鎮圧のために暴力と発砲を繰り返していた。記者はその様子を撮影し、フィルムをもって光州からの脱出をはかる…
光州への往路と復路のタクシー内の雰囲気がまったく違う。往路は運転手も饒舌で、鼻歌もまじる。到着後、光州の学生たちも比較的のんき。ところが衝突が起こって一変。街は地獄絵図のように。さらに復路は必死の逃亡劇となる。その対比がことの重大性を強く印象づける。なかなかいい。
ただ、エンターテイメント感がどんどん増してくる後半をどうとらえるか…。是が非かと問われたら僕は非だなと。
それにしても、ソン・ガンホってどれだけ映画に出るのかと。ボクセイキ、チョンドファン、キンダイチュウからソン・ガンホ、ユ・ヘジンへと、知っている韓国人が映画俳優となり、いい時代になったことは確かだなと。