ニシヒロシ

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のニシヒロシのレビュー・感想・評価

4.3
1980年に実際に韓国で起きた暴動、光州事件を題材にした作品。事件の現場となっている光州地区は、情報操作のため軍部によって隔離されている。そこに乗り込もうとするドイツ人ジャーナリストを送り届けるタクシー運転手が主人公。

まず、ソン・ガンホ演ずる主人公のマンソプが、決して善人じゃないところが良い。むしろあざとく、私利私欲のためなら簡単に人を裏切る、嫌なタイプの人間だ。そのため前半は、とても「いい話」になりそうな雰囲気ではない。

そんな自分本位のタクシー運転手が、軍部の横暴を目の当たりにし、ドイツ人ジャーナリスト・ピーターの使命を理解するにつれ、友情を深めていく。その過程が、特に説明的になるでもなく、一つ一つのエピソードを通じ自然に描かれているところがこの映画の良さだと思う。

同じく実話をもとにした「デトロイト」では、特殊な状況で警官が暴走して市民に暴行をはたらいていたが、本作では軍部が同じように市民を虐殺する様子が描かれている。国民を守るはずの軍が国民に銃を向ける異常事態と、その裏に存在した人間ドラマ。緊迫した空気はどちらの作品にも通ずるものがある。

最後のカーチェイスシーンは、まさかの展開。さすがにこの辺は演出だと思うけど、エンターテイメントとしてはまあアリかと。でまラスト意外と簡単に出国できたのはどうして??

おそらく2018年間上半期No.1になると思います。