まさやんぬ

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のまさやんぬのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

この作品を観て初めて、「光州事件」を知った。40年程前にこんなことがあったのだなぁ。

ひとりの平凡な庶民であるタクシードライバー、マンソプ。最初は社会に対する疑問を感じることなく、デモを行う学生に対しても否定的な目を向けている。ところがドイツ人記者を乗せて光州に向かい、光州の市民や学生と出会うという過程を経ることによって現実を知ることになるのだが、マンソプが持っていた既成概念が壊されていく様が巧みに描き出されている。
政府の発表や、歪曲された内容しか伝えない報道を鵜呑みにする韓国の一般庶民と、事実に気付き、国を変えようとデモなどを行うことで国を変えようとする学生や記者たちが、英語を理解できるかどうかという教育レベルの違いできれいに描き分けられていた。ラストの光州からソウルに戻る際の検問所で、英語の話せる兵士がソウルのナンバープレートを見逃したのも、海外を知っているからこそ体制のおかしさを感じており、ソウルに向かうマンソプたちに、真実を伝え、国を変えるきっかけとなるように望みを託したのではなかろうか。
自らは命を落としたとしても、それが社会を変えるきっかけとなり、子や孫にまともな国を残せれば、というわずかな希望を託すことは、本当に見ていて本当に辛かった。このような自己犠牲をせねばならないような時代が、地球上からなくなり、再び来ないことを願うばかりだ。