次男

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜の次男のレビュー・感想・評価

3.7
どたばたコメディの作法から、転じてシリアス、からの感動的なクライマックスと、オールドスタイルでメインストリームな趣きの、「陽」の韓国映画。「タクシー運転手」というモチーフも生かしきってるし、ソンガンホさんも素敵すぎる。

光州事件、1980年代の韓国の事情についてシンプルに勉強になったし、ストーリーも十分に楽しく、凄惨さには「なんで…」と憤りを禁じ得なかったし、映画館で観てたらぶん殴られたように泣いてたかもなーと思うけど、なんかなー!なんか、知ってる味だし、薄味だったなーって思ってしまう。

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史実と脚色、テイストのバランスって難しいっすね。

本当に史実だけだったら映画的な盛り上がりなんて無いかもしれないけど、脚色したらしたで史実っぽくなくて臭くなっちゃう。

ラストのカーチェイスは、「史実」って言われてなければ全然上がれたけど、「実際にこんな酷いことが…」ってショックを受けてた延長線上には溶け込んでなかったと思う。音楽とか、色味もあるんだろうなあ。感動を押し売ってきそうな雰囲気も相まって、ちょっと臭さを感じたのかも。暗めの、「隠」のほうの韓国映画のテイストなら、ぜんぜん馴染んでたかもしれない。

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ドイツ人記者に魅力が無さすぎたなー。

有名な俳優さんなのかしら。それすらも知らないのに申し訳無いけど、ソンガンホさんには並べてなかった。言葉の通じない、主義や目的も違う二人に、特別な友情関係が生まれなきゃななのに、なんだか全然。

危険な場所に飛び込んでいくジャーナリズムと気概があるのはわかったけど、なんとなく高飛車な印象が拭えない。お高く止まってる感じ。そして、有能感の無さ。無能とは言わない、有能感が無いだけ。基本的にカメラを回してるだけで見せ場が無いってのが大きいと思うけど、感情論で渦中に飛び込んでいくのはプロとしてどうなの?とか。…これらの印象を、シナリオベースでではなく、役者が伝える芝居の印象で変えられなかったかなあと思う。シンプルに、この人シュッとしすぎやねん。

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まあ、正月にごろごろと自宅鑑賞という悲壮感皆無の視聴環境の奴に何言われても不本意やと思います。

出来とか好き嫌いに拘らず、歴史映画は、もう観ただけで意義があるっすよね、知ることに意義があるっすよね。知れてよかった。てか、日本映画のこういうのんは「辛気くさそう」っつって避けるくせに、外国映画やと観るんよなー僕。捻くれてんじゃねーよっつって。
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