みー

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のみーのレビュー・感想・評価

4.3
皆さんの高評価に惹かれて夫と鑑賞。
このジャケの、弾ける笑顔のおじさん。
私はてっきりハートフルなヒューマンドラマだろうと思っていた。寅さんみたいに、いろんな人との出会いがあって…みたいな。

…ところが、とんでもなかった。
韓国の黒歴史を暴く、明るいけど重いバリバリの社会派アクションドラマだった。

「光州事件」…1980年、民主化運動をしていた学生や市民を、軍部が武力弾圧した事件。(結構最近なのが驚き)

中東やアフリカの出来事ではなくて。
今やアイドルにスイーツに大人気のお隣韓国で、たった40年前に起きていた軍部独裁の顛末。

その事件を、この陽気なタクシー運転手を通して市民がいかに悲惨な目にあったのか徹底的に描き出す。
すぐそこで起こっているかのような、臨場感溢れる緊迫した軍部との衝突シーン。

最近の香港のデモをぼんやりとニュースで見ていた私にとって、その体験はとても衝撃的だった。

タクシー運転手が出会う人々は、ハートフルで面白いメンツ。だからこそ余計に軍部の暴力的なシーンには目を覆いたくなったし、怒りを覚えた。

『ホテル・ムンバイ』や『ホテル・ルワンダ』の理不尽なテロや内戦も恐ろしくてたまらなかったけど、この光州事件は国が主体となっているところがもう最悪。

正直、人の命を何だと思ってるんだ?という意味ではテロリストと同じ。むしろ組織的な大虐殺と言えるほどの死者を出しているところに、背筋が凍る。何でそんなに衝突しちゃったの??

実話ベースとはいえあくまで映画だし、描写も大袈裟なのかもしれないけど…。
「この国は暮らしやすい」と感じているチャランポランなタクシー運転手が、光州に入った瞬間に直面する悲惨な現実。

一人の市民として。親として。苦悩するオッサンの振る舞いに、とても心を打たれた。

韓国映画、本当にコメディとシリアスの混ぜ込みご飯が上手い…。ついでに韓国料理シーンも、いつも間違いなく旨い。お腹空く。

事件の詳細を追いたくなる余韻と、ドラマティックに作られたエンタメ作品として大変見やすく、とても心に残る素晴らしい作品でした。


※以下は少しネタバレと、個人的な感想です。








この事件の凄惨さが十分に分かる作りではあったのだけど、終盤がちょっと雑で…(;´д`)タクシーカーチェイスとか、ちょっと笑ってしまった。ピンクの靴も最後までしっかり描いて欲しかったかな。。

それからドイツ人記者のピーターがなんだか存在感が薄いというか、何を考えているのかちょっと分かりにくかった。世界に伝えたい思いを韓国人役者と同じくらい、大袈裟でアツアツの演技で見せて欲しかったかも?
なんとなく、温度差を感じてしまった。
ユ・ヘジンの存在感が素晴らし過ぎたのかな(笑)相変わらずいいお顔です。

韓国映画はいろんな意味で全力投球なのがホントいいですよね〜♫
みー

みー