Eryyy678

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のEryyy678のレビュー・感想・評価

4.0
文字や言葉は真実を歪めるが、カメラはありのままを映す。

軍事独裁政権下の韓国で起きた光州事件。軍による弾圧を世界に広めた実在のドイツ人記者と、彼を光州まで送り届けたタクシードライバー。その実話に基づいた作品。

軍事政権下の韓国。民主化運動は激しさを増し、報道規制も敷かれる中、ドイツ人ジャーナリスト、ピーターはこの国で起きている真実を映すため、光州を目指す。
光州は事実上軍によって封鎖されているため、最初は嫌々ながらも光州を目指し、ピーターを送り届けるタクシードライバーのキム。しかし彼らが光州で目撃したのは、軍とデモ隊が衝突する惨劇。
デモ隊や市民への惨たらしい暴力や虐殺、デモ隊を狙う私服の軍人たち。凄惨極まる光州の様相は、今日の香港情勢を想起させます。

民主主義の成熟度。それはジャーナリムズと比例する側面もあると思いますが、体制におもねる報道機関も多い中、危険を顧みずに真実を映し出そうとするドイツ人記者の姿には感銘を受けます。そして光州の惨状を目の当たりにした、キムの取った選択も…

よく、先人たちが戦ってくれたからこそ、今の私達があるという風に言いますが、人の全ての権利とは、与えられることが当たり前だと思ってはいけないのでしょう。この世に絶対的なものなど存在しないが故に。権利と自由を侵された時、戦い続けることができるのか。これは過去の話でもなく、現在であり、未来なのでしょう。
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