また1つ凄い映画を観た。
終わってみれば、一級の社会派エンターテインメントだった。
自国の恥部を隠すこと無く、映画という芸術を認めた上できちんと後世に残そうとする強い意志を感じた。
尚且つ、それを国内向けだけのマスターベーションで終わらせることなく、普遍的なメッセージ性、投資も入れた世界観の作り込み、欧米人が観ても違和感の無いキャスティングなど、あくまでもグローバルマーケットに通用するレベルで発信しようとしている。
なかでもやはり一番の特長は、他の韓国映画でも見られるが、緩急を織り交ぜた巧みな演出。
ソン•ガンホという、コメディとシリアスを使い分けられる唯一無二な役者を駆使して、導入部分はどちらかと言うとコメディ寄りな演出で、観る側を油断させる。
後半に行くにつれ、この映画の言わんとしていることの核心を徐々に表出させ、これでもかとばかりに怒涛の展開を繰り出してくる。
この演出の落差が巧妙で、我々は驚きと共にこの作品世界に引きづり込まれてしまう。
カット割りやスローモーションの使い方、音楽の挿入も絶妙。
最後は、実際のモデルとなった人物を登場させて信憑性を持たせることで、単なる作り物ではないという説得力をも持たせている。
正しく世界標準なつくりで『パラサイト』のオスカーはまぐれでは無かったと実感。
う〜ん、韓国映画恐るべし。