かのパラサイトのソン・ガンホ主演ということで、日本でも無料配信が増えて目にする人も多かっただろう本作品。この映画、『1987』と続けて観ると80年代韓国軍事政権時代の「光州事件」からの民主化運動がつぶさにわかって非常に勉強になる。
それにしても、『弁護人』といい『共犯者』といい、お隣韓国でつい何十年か前からつい最近まで起こっていたこんな激動の歴史を全く知らずに過ごしていた自分に驚愕した。報道統制のせいもあるにせよ、当時バブル真っ只中の自国とのあまりのギャップに、グローバル社会とは何ぞやと恥ずかしさで息が詰まる気もしつつ。
史実を映画化するにあたり、過度なドラマ仕立てや泣かせる演出を極力避けながらも胸に迫るのはやはりこれらが事実を下敷きにしているから。そして社会的な視点はとても高いのに、常に庶民の側に立つ別な意味での視線の低さ。だからこそ観ている側は、初めはデモを嫌悪していた運転手キムの葛藤と涙に感情移入し、ドイツ人記者ピーターの恐怖を天秤にかけたジャーナリスト魂を共に追体験する。
現実世界において、たった一人の力のない人間が暗黒の歴史を変えられるかはわからない。だが、これを観た多くの韓国市民や、今似た状況になりつつある日本人の私たちや、世界で圧政に苦しむ人々に光のようなものを与えるだろうことは想像に難くない。
