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タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のconranのレビュー・感想・評価

3.9
ジャケット写真の様な、陽気なタクシー運転手の楽しいロードムービーではありませんでした。
あれ?と思っているうちにひきこまれます、、、ただならぬ不穏な空気。

ソンガンホ演じるタクシー運転手キムサボクと、ドイツ人記者ヒンツペーター。
2人が、沢山の勇気ある光州市民と共に、
韓国保安司令部によって内密にされている光州事件の軍部独裁の暴虐の実情を、世界にさらすため、命懸けで闘った実話(タクシーロードムービー?)です。
お勧めの映画は?と友達に聞かれたら、今だったらこの映画を真っ先に推します。


1980年の光州事件は今だに真相が解明されていないそうで、
韓国内で驚愕の恐ろしい暴挙が、たった40年前の隣国で起こっていた事だと初めて知りました。
映画では、光州は軍隊によって封鎖され、電話も不通にされ、
民主主義を訴えるデモを行っている市民を、軍人達は始めは警棒でぶん殴っていましたが、
ついには無抵抗な人にも、怪我人を救出する人にも、白旗を掲げている人にも容赦なく銃撃し、皆殺しにしようとしている有り様でした。
他人事とは思えず終始ゾワゾワした緊張感で鳥肌がたっている状態で観ていました。


ソウルでタクシー運転手をしているキムサボクも、政治情勢に疎く、
「デモをするから軍人に暴力をふるわれるんだ。」
「韓国ほど住みやすい国はないぞ」
と最初は楽観的で、無知なポジションにいる。(これが無知なこちら側には入り込みやすかった。)
おちゃらけで、ちょっとずるくて、金に目がない貧乏人、でも結局お金がないお客に「いいよいいいいよ」とお代をもらえずだったりで、娘を大事にしている男やもめのソンガンホの魅力が光る映画でした。


世間で報道されている事実とは全く違っている光州の惨状に驚いたキムサボクでしたが、
光州事件を世界に報道しようと惨状を知っていて運転させたヒンツペーターに激怒し、2人の仲は険悪で信頼関係ゼロ。。
言葉も通じない2人がこの悲惨な実態を絶対世に知らしめなくてはと心を結束させていく様子が、感動しました。

2003年ヒンツペーターのスピーチやご本人のインタビューも最後に流れます。
この2人のおかげで光州事件が明るみになったと言っても過言ではなく、それにこの2人を支え、命をかけた、温かく、優しい光州の仲間も。。。
最後のカーチェイスでのシーンでは運転手達のそれぞれの家族を想うといたたまれませんでした。
戦争映画を観たような気分でしたが、陰鬱な気分にならなかったのは、作中の光州の人達の本当に温かくて、思いやりに満ちた行動に感動を沢山もらったからだと思いました。
素晴らしい作品でした。ソンガンホのファンになりました。