わたがし

犬猿のわたがしのレビュー・感想・評価

犬猿(2017年製作の映画)
5.0
 やっぱり自分は吉田恵輔が大好きだなとしみじみと思わされる映画だった。誰が何と言おうと俺は吉田恵輔が最高に好き。たぶん吉田恵輔の映画が好きなんじゃなくて吉田恵輔が好きなんだと思う。会ったことも喋ったこともないけど吉田恵輔がめっちゃ好きなんだと思う。俺は吉田恵輔のことがめっちゃ好き。
 吉田監督の撮る映画は大体どれも「自分もあんな人生送れたら良いなあ~」とか「あいつなんかクソだよ!!俺のほうが何倍も楽しい人生送ってるし!!」みたいな恨みつらみの気怠いヒリヒリ感が漂っていて、本人が昔連載していたコラムでも「監督はモテない、役者はあんなにモテるのに、クソが」みたいなことを書いていたので、ずっと吉田監督自身の心の中にあったテーマなんだと思う。それが今回ありったけに爆発してる。それはそれはもう異臭がするぐらいありありと。これぞ本音の映画。完全なるプライベートフィルム。こんな映画を大スクリーンで合法的に観れる日本って最高ですよね!!
 そしてそういう人間のクソしょーもない部分を、ありえないぐらい的確なフレーミングとカット割りで緩急自在に描く。そしてクライマックスでクライマックスなりの落とし前をちゃんと付けて決してオナニーでは終わらせないというプロの仕事。毎回毎回こういうことをする監督ではあるけれど、今回はもう本当に飽きれるほどにめちゃめちゃ巧妙。上から目線みたいで嫌だけど本当に上手いとしか言いようのないぐらい上手い。死ぬかと思った。
 綿密に綿密に人肌を舐めるような気色の悪いエロ描写も冴え渡ってるし、直接的に描写せずともガツンと痛みを感じさせる暴力とか、人体破損の「あ!!やべえ!!」みたいなどうしようもないヤバさは「ヒメアノ~ル」以上だと思う。そうやって徹底的に人間を潰して潰して潰して潰して、からの優しく抱きしめる、みたいな描写。そしてそういう本気の描写と同レベルの熱量で飛んでくるクソどうでもいいギャグ。途中でもう泣いたらいいのか笑ったらいいのかわからなくなって身体が痙攣した。
 今回はどの役者が抜きんでて凄いみたいなのがないので、そのぶん吉田監督の才気がひしひしと感じられる幸せな2時間だった。そして、そういう吉田監督自身もまたこの映画の登場人物同様に、映画業界で生きる身としてクソみたいな嫉妬があるんだなということがわかる1シーンがあって、結局、吉田監督って人間に対して追いこんだり甘やかしたりしてるけど、全部全部自分に対してしてることを映画の中で他人にしてるだけなんだなとあらためて思った。そして、そういう人間が大規模ではないにせよこうやってコンスタントに新作を撮れているという状況が、今の自分にはすごく救いに感じられる。でもこれもやっぱりあんまりヒットしないんだろうなあ