こたつむり

犬猿のこたつむりのレビュー・感想・評価

犬猿(2017年製作の映画)
4.2
似ているところ。違うところ。
魂の形が最も近しい関係だからこその向き合い。吉田恵輔監督による兄弟と姉妹の物語。

いやぁ。終始ドキドキが止まらない作品でした。これは何でしょうかね。相性でしょうか(僕と吉田監督は同じ牡牛座なのです)。もうね。何もかもがツボなのですよ。特に冒頭の数分間なんて最高すぎて、あの場面のためだけに「劇場で鑑賞して良かった」と思いました。

物語のジャンルとしては、コメディとドラマの中間…になるのでしょうか。笑ったり泣いたり怖かったり。様々な感情を刺激される物語。どれもが深く、どれもが浅く。単純だけど複雑。濃い味なのにさらりと飲めるスープのよう。

しかも、専業の女優さんではない筧美和子さんや、江上敬子さんを“自然”な形で捉えているのです。特に江上敬子さんについては、あて書きだそうで。いやはや、吉田監督の“演者を選ぶ眼”には脱帽の極みです。本作は彼女の存在感がなければ成り立っていませんからね。

なので、不遜にも「あー。これ、惜しいな」と思ったのは一箇所しかありません。それはクライマックス。ちょっと“感情を煽り過ぎ”だと感じたのです…が、正直なところ、その場面より前に涙腺が緩んでいたのですよ。つまり、僕が先走っただけなのです。えへ。

まあ、そんなわけで。
相変わらずダメ人間を描かせたら超一流の吉田監督。負の感情を描きながらも、どこかに救いがある…そんな稀有な物語でありました。うはは。最高。

ただ、これは…僕が一人っ子として育てられて“兄弟の現実を知らないから”楽しめたのかも。実際に兄弟がいたら、違った感慨を抱くのかもしれませんね。

それでも、僕から見たら兄弟(姉妹)がいる環境で育ったことは恵まれた話。兄弟(姉妹)がいるだけで“孤独じゃない”のです。だからこそ鬱陶しく感じる…のも事実なのでしょうけど。

最後に余談として。
劇場で鑑賞して「うはは、最高」と思った作品は、パンフレットを買うのですが…本作については「値段に見合ったページ数じゃないな」なんて思ってしまいました。でも、これはお布施。吉田監督の次の作品のためならば700円なんて安いものですよ。

…ちなみに「誰か騙されてくれないかな」と監督のコメントが載っていましたが…はい!僕は完全に騙されました!…と書いておけば、皆さん、パンフレットを読みたくなるに違いない…ふふふ。営業協力です。
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