これまでにもいくつかのレビューで書いたとおり、居心地の悪い映画や、人間の醜い部分を描いた映画が大好きな僕。それは、ひたすら居心地の良い映画や、人間の美しい部分だけを描いた映画ばかりがヒットする風潮に対するある種の反抗心もあるのだと思う。
「さんかく」や「ヒメアノール」で知られる吉田恵輔監督による本作は、タイトル通り犬猿の仲である兄弟と姉妹の喧嘩を延々と見せられる、正に人間の醜い部分を描いた作品。しかし喧嘩と言っても血の繋がっている同士なので、絶えず揉めているのではなく、相手の欠点を知り尽くした上での呆れや嫉妬等を交えた独特のやり取りが続く。チクリと刺さる棘のあるひと言を挟み込んだり、ブラックな笑いを交えたり、グルーヴ感に満ちた脚本がお見事だ。
ただ、「共感」を思いっきり小馬鹿にした導入部分の演出が最高に冴えていた割りに、終盤は自らありがちな共感話に流れてしまったのが残念。そう言えば「ヒメアノール」の終盤もこうだったので、監督の方向性は基本的にこれなのだろう。
