Iri17

ライオンは今夜死ぬのIri17のレビュー・感想・評価

ライオンは今夜死ぬ(2017年製作の映画)
5.0
マルティン・ルターの言葉で「死は人生の終わりではなく、生涯の完成だ」という言葉がある。死に際して人は、過去を想い死ぬのか、未来に何かを遺して死ぬのかを描いた作品。

死に向き合う俳優が死んだ恋人の幻影に出会う。彼女は、主人公ジャンの過去の後悔と最も美しかった思い出を象徴している。
一方子供たちが象徴するのは未来だ。子供は人生の苦しみをまだ知らない。そんな子供たちとの交流を経て、ジャンは、死は未来に何かを遺すことだと感じる。

ジャンは子供たちに協力し、映画=人生の喜びを教え、教わる。映画の知識なんてない子供たちだからこそ、知っている喜びだ。
一方、死んだ恋人を想っても彼女は決して戻らない。そう悟った時、彼女は海に沈んでいく。それは過去との決別であり、未来に向かっていくジャンの決意だ。

ライオンは恐らく、ジュールの過去を象徴している。過去を惜しむのはジュールが大人に成長した証で、彼はこれから過去を想っていっぱい苦しむだろう。だから最後、ジュールはライオンを追って路地に消える。人生という迷路のような路地だ。
ライオン=恋人の幻影を葬ったジャンは、役に向き合えた。

色彩がすごく美しくて長いカットも全く飽きない。
そして、子供たちが全く演技しない。完全に素で映画の撮影を楽しんでいる。ここがこの映画の1番素晴らしい点かもしれない。

人生とは一本の映画だ!映画賛歌、人生賛歌の素晴らしい映画でした。
一つ気になるのはジャン・ピエール・レオが今にも死にそう。息は荒いし、手足はプルプル震えてる。そういう役だから凄まじい演技力を発揮しているのならいいけど…
ヌーヴェルヴァーグ期から活躍する名優なので、これからも頑張って欲しいです。
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