MasaichiYaguchi

鈴木家の嘘のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

鈴木家の嘘(2018年製作の映画)
3.8
「嘘も方便」と言うけれど、この映画に登場する鈴木家の人々は長男の〝突然の喪失〟で倒れた母親の為に優しい嘘をつく。
鈴木家が見舞われた〝不幸〟は、現代社会において決して特殊なことではなく、様々な要因の積み重ねや人生の〝ボタンのかけ違い〟でどのような家族にも起こり得ることだと思う。
とは言え、当事者たちにとって心にぽっかり大きな穴を開けてしまう程衝撃的なことで茫然自失してしまう 。
鈴木家の人々、父・幸男と長女・富美は長男・浩一の〝喪失〟の事実を、ショックで記憶を失った母・悠子から隠し、嘘に嘘を重ねて糊塗していく。
しかし兄に関する嘘は辻褄が合わず、冷静に考えれば見え透いた〝茶番狂言〟だと分かりそうなものだが、「無理が通れば道理引っ込む」で押し通していく。
周りのアシストも受けながら嘘をつき続ける父と娘は、その行為の中で浩一の死と向き合い、自分と兄との過去やそこにある〝罪〟と向き合っていく。
鈴木家の騒動とその再生を描いた本作を観ていると、「家族」とは何なのかと改めて考えてしまう。
社会の最小単位で最も身近な存在である「家族」、鈴木家の人々同様に分かっているようで本当は分かっていない「家族」というもの。
今では死語のように思われる〝家族団欒〟の大切さや有り難みを本作を通して改めて噛み締めたくなる。