傑作の予感しかしない、ほとんどホラー映画みたいな冒頭。かと思いきや細かいギャグで笑わせ、心が温まったところで冷水をぶっかけるような重いシーンをぶつけてくる。これが長編デビュー作とは信じられないレベルの作品を作り上げた野尻克己監督に拍手を贈りたくなる。
一度見せたシーンを登場人物のトラウマの反芻という形でスムーズに見せるセンスにも脱帽。普通、ああいうことやるとストーリーの流れが悪くなるもんなんですけどね。
木竜麻生演じる妹が兄に書いた手紙を読み上げるワンカット長回しのシーンにしても、新人監督と若手女優という組み合わせとは思えないほどの異常な迫力に満ちている。あまりにすごくて、具体的に何を言っていたのか部分的にしか覚えていないぐらいなのだが、静かに動くカメラが捉える木竜の表情だけで泣けてくるのだ!
2018年の映画を語るうえで外せない作品がまた出てきてしまったという感じ。「若おかみは小学生!」と一緒に観るのもいいかも。