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鈴木家の嘘のmuraのレビュー・感想・評価

鈴木家の嘘(2018年製作の映画)
4.5
薄暗い部屋。男はゴミをまとめ、カーテンと窓を開ける。明るい外を眺めたあと、首を吊る。

これから映画が描こうとする世界が垣間見え、こちらも身構える。ただ、ここからはコメディタッチに話が進んでいく。あとで大きく変調することになるけれど。

引きこもっていた兄・浩一が自殺。最初に遺体を発見した母は卒倒。そのまま意識を失う。1か月後、意識はもどったが、倒れる直前の記憶が欠落している。妹・富美は思わず、浩一はアルゼンチンで働いていると「嘘」をつく。さらに富美は、浩一のふりをして母に手紙を送る。父や叔父もその嘘につきあうようになって…

子の再起を信じ、アルゼンチンで働いていることを誇らしく思う母と、子がなぜ自死したのかがわからず、関係があったと思われるソープ嬢を探し求める父の姿が…あまりにも悲しい。

さらに兄の自殺を絶対にゆるさない妹は、兄の思いどおりにはさせまいと、母に自殺の事実を隠し続ける。このあたりがものすごくリアル。自殺した家族を持たない人間には絶対にわからない感覚かと。

自殺が残された家族にどれほどの苦悩を与えるのか、それをどストレートにとらえている。こんな映画がかつてあったか。

で、こんなに悲しく聴こえる『Happy Birthday To You』ははじめて。

これも松竹ブロードキャスティングの制作なんだ。本当に信頼できる映画づくりだなと思うと同時に、また幅が広がったなと。

主役の木竜麻生の独白シーンがもっとも印象に残った。『菊とギロチン』といい、新人賞レースは彼女で間違いないなと。
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