いびつで生々しく、それでいてどこか幻想的なホームドラマ。
母のために嘘をつき通そうとする父と娘と叔父。登場人物みんないい面だけでなくどこか嫌なところまで描かれていて、見ていて息苦しくなる。だからこそ人物それぞれの葛藤が身に染みて理解できたし、鈴木家の物語がどのように着席していくのか、じっと見守りたい気持ちになれた。
アバンタイトルの、母親が息子浩一の自殺を発見する場面は台詞ではなく画面で母親の心境を淡々と描写する名シーンだと思った。
序盤はユーモラスな雰囲気が続くも、なぜか割れている車の窓や、手元から遺骨をゴトっと落としてしまう気まずいシーン、音楽のかかるタイミングなど、どこか不穏なオーラが漂う。
分裂してしまった家族をどうにか一つにつなぎ止めようとする、延命治療のような振る舞いに翻弄する鈴木家の人々は懸命ながら痛々しく、それでいて過度に肩入れさせるのではなく、どこか突き放したような、どこか淡々とした描かれ方だったのが印象的であまりにも切ない。吉田大八監督の『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』的なエッセンスも感じた。
父親がスコップを持ってソープランドに襲撃するシーンが個人的ハイライト。
役者陣の演技もみんな実在感を纏っていて素晴らしく、とくに後半にちょっとだけ登場する「北別府さん」の泥酔演技は見物。ほんとに酔ってる? って思わず思わせるような厄介な暴れっぷりで、場の空気がぶち壊れていく感じが秀逸だった。