Inagaquilala

鈴木家の嘘のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

鈴木家の嘘(2018年製作の映画)
3.4
いきなり加瀬亮扮する鈴木家の引きこもり長男の自殺から物語は始まる。タイトルにある「嘘」とは、その死を目撃したことで、記憶を失ってしまった母に、長男は生きていると思わせる他の家族によってつくられる偽のストーリーだ。ブラジルに行って、元気で仕事をしているという長男の消息を知らせ、母の安堵を画策する。父と長女の「嘘」が発覚して、巻き起こる騒動を、ハートウォームに描いた作品だ。

監督は石井裕也や大森立嗣などの作品で助監督を務めた野尻克己。この作品が初の劇場映画初監督作品となる。鈴木家の父親役を岸部一徳、母親役が原日出子、長女を木竜麻生が演じており、それぞれ不思議な一家の雰囲気を醸し出している。長男の自殺という劇的なことが起こっているのだが、この一家は平穏を装うように努力している。その気分がこの作品の肝かもしれない。時折、描写される鈴木家の全景が、ひどく当たり前の日本家屋で、なかなか象徴的なカットとなっている。
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