こたつむり

サンズ・オブ・ザ・デッドのこたつむりのレビュー・感想・評価

サンズ・オブ・ザ・デッド(2016年製作の映画)
3.8
♪ 誰もいないから きみしかいない
  誰もいないから きみがこの世でいちばん

新感覚のゾンビ映画でした。
諦めなければ、未開拓の世界は見つかるんですね。この挑戦精神に感服です。

思うに、本作の主人公は製作者の分身。
前へ、前へ、と歩みを止めない気丈な姿が格好良かったです。確かに「ステイ」と言われて留まっていたら、新世界なんて行けないですよね。

さて、物語の方ですけれども。
端的に言えば、ゾンビと砂漠を旅する映画。
何を言っているか分からないですよね。何しろ、相手は意思疎通が出来ないゾンビ。油断すればガブリと噛み付いてくるのです。

でも、考えてみれば。
最近流行りのスマートモデル(全速力疾走型)でなければ落ち着いて対処が可能。勿論、相手が一人(一匹と数えるのが正しいの?)に限りますけど。

しかも、砂漠を彷徨うのは苦行を超えた地獄。
それは名作『眼には眼を』を引っ張りだす必要もないほどに明瞭な話ですから、相棒がいれば心強いのです。とは言っても相手はゾンビなんですけれども。

また、本作は“ゆとり”を忘れていません。
ゾンビに追われる理由、ゾンビから距離を取る方法、そしてゾンビ以外の脅威に対する姿勢(ヒーロー映画も真っ青な展開)。それらに笑いのエッセンスが混じっているのです。このセンスは見事でした。

ただ、ラストは少し冗長だった気がします。
“あえて見せない”のも技術のひとつ。折角、想像力を喚起する方向で描いているのですから、地平線に向かうだけでカタルシスは十分にあったと思います。

それと、一応、B級映画の括りですからね。
冷静に捉えるとツッコミどころは多いです(特に時間と距離の問題について)。でも、映画で大切なのは整合性ではなく製作者の意図を如何に掴むか。そう考えれば見逃すのが吉ですね。

まあ、そんなわけで。
新感覚(と言っても2016年の作品ですが)のゾンビ映画。一欠けらの想像力で物語は大いに面白くなると教えられた気がします。御馳走様でした。
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