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泣き虫しょったんの奇跡のmoeのレビュー・感想・評価

泣き虫しょったんの奇跡(2018年製作の映画)
3.8
試写会行きました。将棋モノの映画は「3月のライオン」ぶりで、比べるのも野暮かもしれませんが、対局中の描写など対照的で、個人的には比較するのが面白いなと思いました。片や天才中学生棋士、片や年齢制限というタイムリミットに喘ぐ20代も半ばの奨励会員。

天才同士の手に汗握る対局を、濃密な心理描写と共に丁寧に丁寧に描いていた3月のライオンに対し、圧倒的なテンポの良さで疾走感のある対局シーンを膨大な数映して、呆気なく、どんどん負けていく、その虚しさが逆に伝わってくる本作。

個性的な仲間たちに囲まれているのはどちらの作品も同じだけど、ただの仲良しごっこで終われない、いつか終わりが来るという虚しさの共有で成り立つ友情というより傷の舐め合いというリアルな関係性が描かれているのは見ていてしんどかった。

ポスターでしょったんを取り囲む俳優陣の姿が、ラストでしょったんだけでなく観客にも走馬灯のように流れ込んでくる。主要キャラかと思っていた俳優さんが想像以上に少ししか出てこないケースがあまりにも多くて拍子抜けしたのだが笑、僅かな時間にも関わらず非常に強い印象を残す人ばかり。たくさんの人の想いが積み重なってラストの“泣き虫しょったん”へと繋がる様は圧倒的だ。

“泣き虫”とタイトルで言うだけあって龍平さんの涙が印象的。顔をくしゃくしゃにして泣くシーン、松田優作にそっくりで震えました。最近、宇宙人とか殺人鬼とかやってたから、こんな人間くさい龍平さん観るのは久しぶりだな。いや、初めてかもしれないな。と思った。試写会ドタキャンしたの許さないぞ(許す)

自分のやりたいことを貫け、夢を諦めるな。そういうメッセージ性のある作品って物凄い数あると思うけど、この作品にはその押し付けがましさが一切ない。むしろそれは主題ではないように思った。好きなものに向き合い続けるという行為そのものの、旧友とささやかに笑い合うような幸せを大切にし続けたしょったんだからこそ手に入れることができた、大人の夢だからだ。

(試写会に行くのは初めて!上映前に監督としょったん本人のお話を聞ける貴重な機会。あの短い時間で、確実に映画が面白くなったなと思える様々なエピソードを話して頂けました。豊田監督面白い人だった。しょったんのほうが真面目に宣伝してました笑)
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