おなべ

泣き虫しょったんの奇跡のおなべのレビュー・感想・評価

泣き虫しょったんの奇跡(2018年製作の映画)
3.6
プロ棋士になる為には26歳までに四段昇格が絶対条件という鉄の掟がある。主人公は奨励会に入会するも年齢制限を迎え夢半ばにプロの道を諦める。会社員として働く傍ら、どうしてもプロ棋士への夢が諦め切れなかった主人公はもう一度プロ棋士を目指すべく漸進し始める。

本作は《瀬川晶司》著の同名小説を《豊田利晃》監督によって実写映画化された。監督自身も9〜17歳まで奨励会に在籍し、主人公同様に将棋の道を志した1人である。本作は、人生でその道を歩んだ人にしか分からないような将棋に賭ける熱い想いを紡ぎ出している作品だ。また、《野田洋次郎》《國村隼》《松たか子》《染谷将太》《妻夫木聡》etc…豪華キャストが脇を固めている。

“しょったん”こと晶司を演じた《松田龍平》は、口数が少なく普段は飄々としているが、将棋な事となると煮えたぎる心の奥底を感じさせられるような熱い部分を巧く表現しており、加えて、これ見よがしに撮られてない演技に好感を抱いた。

《染谷将太》の将棋映画の出演率の高さに驚きを隠せない。『聖の青春』『三月のライオン』そして本作である。どの作品でも棋士として出演し、ある時はライバルとして、またある時は超えるべき存在として立ちはだかり、どの作品でも常に存在感を放っている。本作では脇役であるが、総じて機知に富んだ知性的な役柄は彼との相性が抜群なのかもしれない。

自分自身機会があって本物のプロ棋士の対局を目の当たりにする事があり、映画の役者と比較して見てみても、敗北へのプレッシャーに押し潰されそうになりながらも勝利への執着心を剥き出しにして将棋を指すさまは、本物のプロ棋士のそれだった。特に対局中の動体演技に関しては全く違和感が感じられず、寧ろ誇張し過ぎる位が丁度よくサマになっていた。

原作未読という事もあり、どれ程原作に忠実に作られているのかは分からないが「そのシーンは一々映像で見せなくてもナレーションで済むのに」という不必要なシーンが幾つかあったのが少し引っかかった。


【以下ネタバレ含む】


◉《藤原竜也》はカメオ出演していたが、最後まで何者か分からなかったので、知っている方がいれば是非とも教えてほしい。
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