Inagaquilala

ゆらりのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

ゆらり(2017年製作の映画)
3.5
物語は現在、未来、過去の3部構成で語られていく。現在から未来への移行がやや唐突なので、戸惑うのだが、小道具やエピソードの重複で割合すぐにその時間関係は判明する。いずれのエピソードも母と娘の関係を描いたもので、三代にわたる家族の歴史が描かれる。

現在、未来についてはリアルな物語が進行するのだが、最後の過去については、ファンタジーの要素が入り、時間を巻き戻すリモコンが重要なアイテムとなってくる。結局同じシーンが何度も繰り返されるのだが、最後の繰り返しがかなり意味を持ったものになっており、結果としてこの繰り返しのシーンは幻想シーンとも受け取れる展開になっている。そのあたりがまことに都合よくできており、やや無理があるかなとも感じた。

あえて3部構成のうち、過去を最後に持ってきたことが、この作品の最大の特徴なのだが、これが最後の種明かしのようで、やや安易な感じもしないでもない。とはいえ、脚本はなかなか考えられており、それぞれのエピソードも、未来はやや弱い気はするが、なかなか面白く観ることはできた。

初監督作品ということもあり、ややシーンのつなぎなどはまだまだな感じはするが、アングルなどもよく考えられており、悪くはない。どのエピソードも劇中で仕掛けられるささやかな「嘘」が、物語を動かしていくのだが、それが劇中で展開されるマジックとも絡み合って、なかなかの奥行きも感じさせる。まだまだ無駄なシーンも多く感じられたが、総じて退屈することなく最後まで観られたのは、ひとつの収穫かもしれない。
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