ひとみ

きらきら眼鏡のひとみのレビュー・感想・評価

きらきら眼鏡(2018年製作の映画)
3.2
 誰かが死ぬことに耐えられない男女が語り合う系。ベッドシーンがないのは良かった。それから主人公の男子が本当にウブな雰囲気で、緊張している仕草等もとてもリアルであった。ただ、現実に人が、人が死ぬ事実に直面した時、実際にはもっと自然と受け入れ態勢に入るのではないかと感じた。おそらくほとんどの病人は、あそこまでわかりやすく絶望したり、愛する人の前で暴れたりしない。客観性が足りないし、この世界には強く乗り越えた人が出てこない。日本人はみんな、本当にこんなに流されやすく脆いのだろうか。この作家の書く世界には悪い人がいないが、人間としての弱くても強く生きようとする側面を持ち合わせた人もいない。様々に経験を重ねた、悟ったような人。現実世界にはそういう人がいるものだと思う。身体障害者、らい病患者、近所のご高齢のお婆さんでもいい。出てこないのは、出したらその人だけ際立ってしまうからだろう。
まるで、若者同士のじゃれあい。容易に繋がり、容易に別れる幼稚な恋愛ゲームを見ているようだ。この世界には、言葉にできないほどの辛い苦しみを負った人がいる。その人が話し出した途端に周囲は黙って話を聞ずにはいられないような貴重な人間が、数多くいるというのに。
ひとみ

ひとみ