幕のリア

YARN 人生を彩る糸の幕のリアのレビュー・感想・評価

YARN 人生を彩る糸(2016年製作の映画)
2.8
糸を扱うのは私の本業の内の一つ。
糸を見れば、それがどんな姿になり得るのか想像も出来るし、想像し得ない姿になる事も。

一本の糸が編み物になったり、生地になったり、複数の糸と撚られたり、交編されたり、織られたり。
いくら技術革新が進んでも、基本的な組成や工程は変わらないし、手造りという手法も技術や趣味
の領域だけなく生き続けている。

糸はどんな形にも変化し得る物のメタファー。
アイスランド、ポーランド、デンマーク、カナダ、キューバといったファッションの中心地でない国々で、その主題をどんなフィロソフィーを含んで表現されているか。
その視点が本作のオリジナリティであろう。

コストや納期や品質。
経験値からおおよそ想像が付いてしまう。
それら要素をいかに端折ってそれなりのものにするのも技術と言えるかもしれない。
お安く旬で使い捨ての代用品に過ぎない物を生産せざるを得ない業界の環境の変化に辟易としているし、そうありたい。
それでも、それが仕事でその対価としてサラリーを得てるなら、どんな批判精神を持っているとしても、自分もその紛い物であるのだ。

本作で描かれている糸から紡ぎ出されるアートが高尚で端倪すべからざる物とは映らないが、そこには確かなフィロソフィーがある。
刮目して見よ。
日頃抑えきれない気の進まぬ仕事のストレスをプラスに転じさせられるかどうかは自分次第。
そんな事は常日頃感じているが、再認識するきっかけは与えてくれる。
幕のリア

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