Solaris8

花筐/HANAGATAMIのSolaris8のレビュー・感想・評価

花筐/HANAGATAMI(2017年製作の映画)
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10/28 東京国際映画祭で花筐を観てきた。地方を舞台に映画を作ってきた監督が、佐賀の唐津を舞台に、戦争の足音が迫る時代を生きる若者達の青春群像を描く。自分自身、大林監督の映画は殆ど観た事が無く、激しい感情を露にしたゴッホの油絵のような映像と作風には驚いた。

檀一雄の花筐の言葉の由来をネットで検索すると室町時代の世阿弥が作った能の演目が見つかる。花筐の映画は、公家と武士の文化が混ざり合った華やかで力強さを感じるが、織田信長の様な狂気を含む混沌とした能の舞だった。

以前、何処かで能と狂言は違うと聴いた事があるが、能がシリアスなストーリー、狂言はコミカルなストーリーで、狂言は能と能の間に気分転換で舞われると聴いた。花筐の映画自体は狂言のようなコミカルな表現に終始するが、大病を病む監督が、次の時代を担う世代に伝えたい願いはシリアスで真摯、その物だった。

自分の父は富山の新湊で生まれたが祖母に連れられ、何度か新湊曳山祭を見に行った事がある。漁師町の曳山には、漁師町らしい魂が揺さぶられる魅力が在り、映画を通して観る唐津くんちの曳山も素晴らしい。

北陸能登の輪島塗りは、室町時代に生まれたそうだが、映画の「花筐」は、輪島塗りのように何層にも漆を塗り固めた漆器のような映画なのだろう。自分は静かな映画が好きなので感性が合わない映画だったが、監督の故郷、友情、戦争等に対する真摯な思いは受け止めたい。
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