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花筐/HANAGATAMIのkrhのレビュー・感想・評価

花筐/HANAGATAMI(2017年製作の映画)
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言葉と演出を速いスピードで畳み掛けてなお息が切れない3時間。良い悪いの評価を全て凌駕して、全ての要素に意味がある。当時79歳の身で苦しい病と闘いながらの作ということで、その圧倒的な情熱に改めて驚かざるを得ない。

反転や反復の演出が印象的な今作。何度も反転させられると、本来どう見えていたのかすっかりわからなくなってしまうし、何度も繰り返し差し込まれるカットの畳み掛けには、内と外、自分と他人、過去現在未来の時間軸が曖昧になっていくような感覚がある。
それは、合成やほかの演出と同じように、フェイクをフェイクと強く意識させて純粋な本質を洗い出すもの。見た目の嘘を認識すればするほど、その本質が実在するということがわかる。あれだけ突飛を色々やりながら、無意味なフンイキ演出がないのがちゃんとこちらにもわかる力量はすごいとしか言いようがない。

涙も精液も元は血液。誰もが絶えず血を流した時代。流さざるを得ない血。自ら流した血。それらは全て戦争によって駆り立てられた。生きたいように生かされないからしたいようにする。一所懸命。「青春は戦争の消耗品」
では、今を生きる私たちは。最後の問いかけの、ナイフを突きつけられるような鋭い真の迫り方は、そうそう体験できるものではないのでは、と思う。
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