どーもキューブ

花筐/HANAGATAMIのどーもキューブのネタバレレビュー・内容・結末

花筐/HANAGATAMI(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

大林宣彦の戦火の赤いかたみ



原作檀一雄。
脚本桂千穂。
編集、撮影脚本、監督大林宣彦。 



たぶんおそらくきっと元祖異業種監督(と大林監督は自分の事を言っていた)、大林宣彦監督。

お気に入り監督の尾道出身の大林監督をここでおさらい。

異業種監督、CMディレクターから自主個人映画を数々撮りあげた実績から東宝産お屋敷アイドルホラーで傑作「ハウス」を撮りあげた。

薬師丸ひろ子と組んだとんでも学園「ねらわれた学園」

一大リメイク物語へと成長を遂げた原作筒井康隆。時をめぐる原田少女。実験室はラベンダー色の恋「時をかける少女」

以後角川映画、アイドル映画、アニメ、金田一スピンオフ、原作小説物、SF、伝記物、地方大林映画と撮り続ける。

名匠原作山田太一とタッグを組み鶴ちゃん、秋吉久美子と魅せたあの夏いちばん静かな幽霊という名の異人「異人たちとの夏」

石田ひかりをむかえて撮りあげたノスタルジー2部作

赤川次郎原作の仲良し姉妹のふたりの秘密「ふたり」

あの頃夢中はギターのデンデケだけさあ「青春デンデケデケデケデケ」

北海道を舞台にとある少女を求めるノスタルジー「はるか、ノスタルジィ」私、個人的には現在の戦争3部作に繋がるような作風な気がする。地方、ラブ、逸話を基本に展開する感じは、この「はるか、ノスタルジィ」からだと推測。

大挙大人数出演させ時間を遡る作風をミステリーでまく宮部みゆき原作「理由」本作も展開のはやさや役者の語りかけ方など戦争3部作のニュアンスは充分感じられる。

突然表れた素人っぽい少女と物語を紡いでいく「22歳Lycolis葉見ず花見ず物語」こちらも戦争3部作につながる作風。「あの空の花」の一輪車少女やまだ見ぬ新人女優を果敢に出演させる感じあり。

大胆脚色と舞台を変え、テンポはやめでリメイク果敢な挑戦「転校生さよならあなた」

病を抱え監督の見た花火の涙の意味から新潟長岡市に魅せられ、壮大な語り部ながおか映画「あの空の花」戦争3部作のファースト

北海道に集まるなななのかの日。それはお葬式からひもとかれる恋と秘話の日々「野のなななのか」戦争3部作セカンド。時勢と展開とラストにつれてモノローグが重なり合う。

そして、ようやく完成した最新作。舞台は唐津。
原作壇一雄。念願の作品で70年代に脚本は完成していたが頓挫。
公開すると絶賛、絶賛長さ169分をふり落とす賛辞。

新年過ぎて新潟県長岡市で先行上映するという事で雪ありの長岡リバーサイド千秋ティジョイまで行き鑑賞してまいりました。もと地元のくせに結構迷う。



まずね、2010年代ベストに近い日本映画の誕生だということ。とてつもないモンタージュだということは言っておきたい。

長いとかリアリティがない、年相応にみえないとか、大林監督の地方映画そいう言い方もできるのかもしれない。が、私は、そうは全然これっぽっちも考えない思えない。

まず「この空の花」と「野のなななのか」をはるかに超えてくる
強烈な「ラブ」と
怒涛な戦争の恐ろしいほどの大林戦争劇画調モンタージュの力に
ただただひれふし、涙し、登場人物に感情をかきむしられた。

ああ、やめてーーその恋と戦争の影にぶっ潰されていく登場人物に戦争のこんちくしょうにイラついた。

平和らぶ
平和で考える
平和をもとめる
ポテチがくえる。
うれしいなあと思え!と思える。喜ぶ。この映画を思い出しながら感想をたぐりながら思う。

見ている途中で何度もよくわからない涙が流れていた。

こういう「涙」はまたはじめてだ。けっこうぐちゃぐちゃに涙が出たのも初めてだった。自分でもびっくりした。それは、大林の最後の雄たけび、がなり
にもみえた。登場人物をとうしてだが。

それは、戦争前のまるでひそやかなピクニックのような登場人物たち。得てしてなんだか暗い雰囲気の戦争まえ。

到底同世代にみえない登場人物。

ひとりひとりに背負っているなにかが涙をながさせた。
はたまた劇場たる激烈なカットの早い中に迫りくる何かに感動が追いつかず涙が出たのか意味は知れず。

チェロがガンガン旋律を刻み、
バックスクリーンに配合したような無数の唐津の山車、
戦争の刻み、
時の変わり、
翻弄される病、
戦争の病に背を向けて馬に乗り、
体をかわし、
バカ騒ぎする花筐の登場人物たち。
画面のなかからひたすら語彙を挑発する。
旋律がおだやかに、
猛烈に何度もくりかえし、戦火につつまれる大林のマジックのアニメのようなカラーギミックの洪水にただただ涙がでる。
それは、まぎれもない「戦争」の前に無力なちっぽけな人々のこだわりや、
喧嘩や、
嫉妬や、
なんだか頭デッカちな論理や理屈やうるさい嫉妬や
体型や悪口や
あこがれや
なんだかいろいろ花筐には渦巻く。

あの外の風景に、、、、。

特に本作の終盤の鬼のような洪水の海と死と戦争をつなぐモンタージュは、超見てほしい。ものすごい熱量を帯びていて、とても言葉では表現できない。

戦争を前に大学たるところの若者たちの青春もの。そこは、ゆえんある唐津。お祭りが有名だ。そして時は、戦争へ。

と平たくいえばそんな映画だ。

「あの空の花」でも結構たじろいだのに、「あの空の花」を超えてきた。すごい、ただ凄い。それは、はかない「死」を意味するカットなんだろうが、、、。
海に、
地に、
血に、
飛び込み、
体は口を求め、
それぞれが
それぞれの末路を
ぐちゃらぐちゃら迎える。

大林宜彦の恐ろしいほどの怒りがうぞまきつつも、どこか劇画チックなあの「ハウス」を彷彿し、越えさりネオ「ハウス」がみれる。

とても高齢な監督というとバチと罰があたりそうなほど超々力強いのでぜひごらんください!本当に終了してからボーっとした。し、

こんな日本映画やはりみたことねーーーーーーーーーーーーー

もう最高傑作またでた、。いやもうこんなのとれない画面と音とカラー。すごいチャンプル、ミックス、ぐちゃぐちゃ。

赤が印象的に垂れ、流れ、花となる
月が黄色に満ちる
海はどす黒い波になり恋を蒼色に飲みこんでいた
油絵の印象は、ラストより感じられた。

フェリーニ後期映画のよう。「フェリーニのローマ」とか「女の都」とか似ている。指針や芯の根っこがが全く違うけど。自分のイマジネーションを念願かなって具現化してるつもったものが、しっかり俳優に憑依して、大林の分身となし表現している。

「飛べるのか」

「いや俺たち戦争の前に飛んでるよ」

「おい!そこの観客!俺のイマジネーションについていけるんかい」

と大林さんのステッキで頭をこんこんどんどん浸食されていく。

それは、尾道三部作の大林じゃない。
ああそれは、ノスタルジー三部作の大林でもない。
もお転校生の大林でもない。

戦争三部作といわれる根本の「戦争」をなんとか伝達しなければならない
つたえなければならない
どうしてもつたえなければならない
若者に若者たる戦火を生き抜いたこの原作を
つたえたいみたいな

何か怒りのような
何かまたエロスのような

なないか大林の怒りと美しさと激しい喜怒哀楽がうずまく。
唐津のお祭りが横にうけながされ、行進して、時がすぎ、映画はおえる。取り残されたように劇場をさる。

2010年代の日本映画の中で私は、ベストスリーに入る感動をした、
という事実は、いなめない。何度も涙を手でぬぐったおっさんが。この事実は否めない。だってすごいんだもん。ほんとに。

あの窪塚くんのやたら無用な微笑みに(こういう方がいたようです。山田洋次パンフで曰く)。うさんくささと挑発と主役たるラブに引きづられ、戦争と友情に翻弄された。

あの柄本くんのこ汚いぽかーんとした眼鏡の元気さ。

あのフランケンシュタインの学生のような長塚 圭史。彼の身体からくりだすこ難しさと病弱性の素晴らしいこと、俺が惚れる!!!

そして本作の若さ役、満島 真之介を見て、エロスを感じた。突進する、裸になりヤケニなり、馬にのり、酒をのみ、殴りたいヤツは殴り、戦争に憎悪を向け、キスはする。満島さんの色気のバンカラさを見てほしい。

山崎さんのはつらつな美しさ。すっかり目のくぼみは、相変わらずの山崎さん!今や東宝ガールでモデルさん。「この空の花」から羽ばたいた女優さんだ。

やっぱり大林ガールにすっぽりはまった門脇麦の根暗そうなあのただずまい。「愛の渦」からここまで来るのはやかったなあ。大林ガールになりそうな予感は「愛の渦」見た時から思ってたけどはやかったなあ。とても合ってねえ。静かな喋り、謎めいたくらさ、裏腹な宿命奔放なエロス。

堂々とふるまう前作から登場の常盤貴子のお姉さまぶり。ラストの末路。

本作の要の大林ヒロイン矢作さんに多くの大林チルドレン野郎どもが心奪われるに違いない。幼さ、多角なラブ、包まれる弱さと血。近づきたい男の体、姉の存在。とってもロリータ性を感じつつ、崇めたてまつられる大杉ミューズだった。これからの活躍が楽しみ!安い連ドラに出てほしくないなあ(オジサンの願い)

とにかくもう一度みたい。DVDでたら購入希望。


さて
大林宜彦のネオエポックベスト傑出
大林宣彦の戦中ラブハウスのかたみ

唐津、戦争前の赤いかたみ

傑作できました。どうぞ!
追伸
はあ。やっとこ、まあ、かけたけど、とりあえず、とにかくもう一度見たい。新潟での公開をのがして後悔。シネウインドやってくんないかなあああ。

こんな日本映画2010年代だれが、とれましょう。いやいや大林宜彦だけだよ!!!だから凄いのよ。戦争映画だけど、スピルバーグやメルギブみたいに死体が飛んだりしなくても、戦争を語れるということ。

こんなにイマジネーション豊かに。
だから素晴らしい!

根底には怒りがある。本作に。
あとフカキンの「バトルロワイヤル」といいイマヘイの「うなぎ」「赤い橋の下のぬるい水」といい黒澤明の「夢」といい巨匠たちの老年期いやいや青春狂気とも言える元気殺気盛んさに頭が下がる!

Yahooブログ本日投稿。俳優面加筆版。
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