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花筐/HANAGATAMIのvizilakeのレビュー・感想・評価

花筐/HANAGATAMI(2017年製作の映画)
4.0
作品に監督の心境が反映されるのは当然だが、、
『花筐』にはそれがダイレクトに表現され、観客にも痛いほど伝わる。。
大林宣彦監督はこの作品のクランクイン直前に肺癌が見つかり、余命3ヶ月と宣告された状態で撮影に挑んだ。。
人は死ぬ。。
不本意に死ぬ。。
『花筐』では病気で死ぬ少女、戦争で死ぬ少年達の姿が描かれる。。
しかし、戦争のシーンは2分程の非常にPOPに映像で表現され、肝心の死に際は観せていない。。
ただ、死を待つ少年少女がスクリーンに映る。。
自分の命日を病気に決められる、国に決められる不本意さを監督は自らの心境に重ねて映画を撮ったのだ。。
登場人物の台詞の一言一言が監督の遺言のように思えて涙が溢れるだろう。。
“映像の魔術師”と呼ばれる大林宣彦監督の独自の美的感覚はこの作品にも遺憾なく発揮されている。。
リアルを求めない異質なCGは今回も多用され、約3時間ある映画の尺の長さを一切感じさせない素晴らしい映像美を堪能できる。。
ヴェルナー・ヘルツォーク監督の『ノスフェラトゥ』に登場するイザベル・アジャーニへのオマージュを感じさせる病気の少女 矢作穂香の美しさと儚さも見物だ。。
3ヶ月だった余命は映画への創造欲、エネルギーで見事に延ばし、宣告から1年半経った現在も大林宣彦監督は健在である。。
私は日本人だ。。
私は映画監督だ。。
私は表現者だ。。
これが彼の形見にならないことを心から願う。。
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