海老シュウマイ

カランコエの花の海老シュウマイのレビュー・感想・評価

カランコエの花(2016年製作の映画)
1.0
やりたいことはわかるし、短編ゆえの制約も理解できる。インディーズだし好きなことやっていい。
ただ、あまりにもいつものやーつ感が。

緒方貴臣「飢えたライオン」に似てた。シーンの切り替わりで黒くするやつ。
しかも二人ともインタビューで似たようなことを言っていて「観客に考えさせたい」うんぬん。だから劇伴入れたくないとか。

なのに、作品としては言うほど考えさせられる余地もなく、善悪のはっきりした登場人物とわかりやすい行動で余白はなかった。
この作品を観た後に、あの男子生徒や教員の行動が正しかったって意見が出るとでも思ってる?あえてNG例を再現するマナー講座のビデオでしかなかった。

「考えさせたい」なんて、単に結論を投げっぱなしにするための言い訳で、
もし作り手の中に理想とする未来像があるのなら、自信を持ってそれを描けばよくて、そこが議論のスタートなわけじゃん。
普通にラスト、2人乗りのシーンで良かったじゃん。

そもそも「考えさせたい」って20年前ならいざ知らず、このタイミングで言われても。
インタビューで、「恥ずかしながら作り始めるまで「LGBT」という言葉や問題について知らなかった、だから調べて作品にした」とのことらしい。
海外の映画観てないの?とか、美輪明宏やマツコデラックスを珍獣としてしか見てなかったの?とか、幼少期から身の回りに結構、性自認に違和感あるのかなって奴いたと思うんだけど。
アンテナ低すぎというかただの無神経だろ。

いや厳密には、そんなことなくて、彼の身の回りにもいたし、「それでもそいつがいいと思ってるならそれでいい」ぐらいを学びつつ、マツコはマツコで大変なんだよな、ぐらいは思っていたんだとは思う。

問題なのは、嘘なのにインタビューでそんなことを言うのが正解って意識で、その教科書的、優等生的、受け手に媚びるような意識が、作品にも影響していませんかってこと。

LGBTってテーマは扱った時点でもう勝ち確なわけで、単に勝ち馬に乗っただけじゃないですよね?次はシスターフッドものですか?
世論がウクライナ派兵に傾いたら、「それまでウクライナのことを知りませんでした」とか言って、「かわいそうな」ウクライナの人たちを救うための戦争讃美映画作ったりしませんよね?

今、自分を含めて身の回りの人たちは目の前のことだけで精一杯の暮らしをしてますよ。変えていかなきゃいけないことは山ほどあるんです。
表現者なら、表現者となれた恵まれた環境があるなら、一般人の半歩先を歩いて、未だ掘り起こされていない問題に立ち向かうような作品を作ってください。逆に現実の辛さを忘れさせてくれるエンタメ映画でもいいし。それも映画の力でしょ。よろしくお願いします。