菩薩

あみこの菩薩のレビュー・感想・評価

あみこ(2017年製作の映画)
3.5
俺が「買い物袋から飛び出ているネギ」に文字通り突出した興味・関心を惹かれ、それをもはやフェティシズムと呼んでも良い領域にまで磨き上げているのは、そこに自分が一生辿り着けないであろう大衆文化の輝きを見るからである。家族で鍋を囲み、新作の抹茶スイーツに舌鼓を打ち、鳴き声ばかりがうるさい小型犬を可愛がり、時々は家族旅行に出掛け記念写真を撮る、そんな絵に描いたような幸福な瞬間は、おそらくこの先の人生には訪れない。そんな物を下らないとして蔑んでいた時期もあった、だがそれが単なる負け惜しみである事に気づくのに、そう時間はかからなかった。男女問わず、ブスがこの世知辛い世の中を生き抜いていくには、自分より明らかに上のステータスを持ってこの世に生を受けた面々を引きずり下ろすか、自分と同じくブスとして生を受けた面々を「タダのブス」と更にこき下ろすかして、自分を「特別なブス」の領域にまで押し上げて行くしかない訳だが、所詮ブスはブスなのである、可愛い(カッコいい)は、残念ながら作れない、なんせそれは生まれ持っての才能だから。そんな事にあみこが気づくのはそう遠くない未来であろうが、あみこにはあみこで在り続ける為に、これからもLOVEでも無くHATEでも無くクソダサいPUREの拳を握り続け、オレンジでも無くグレープフルーツでも無く酸っぱくそしてほろ苦いレモンを齧り続け、埼玉でも無いが渋谷や原宿でも無い池袋を彷徨って欲しいと思う。ブスだって良いじゃない、人間だもの。でもねあみこ、レディオヘッドはどちらかと言うと、大衆文化だと思うよ。立て、立つんだあみこ、ブスの生命力は、そんなもんじゃないだろ、ブスの生き様を、いやらしさでは無く嫌らしさってのを見せつけてやろうじゃないか(どこからか一緒にするなとの声が聞こえる…)。あみこの目つきは伊達じゃない、人類に絶望しようとも、急ぎ過ぎる必要は無いぜあみこよ。
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