好きな映画でした。
テレビドラマだけでなく映画でも、爽快感や正義、勧善懲悪を第一とした「社会派風」のライトなサクセスストーリーばかりが増えている今の日本で、この物語を企画、制作したスタッフの志に(勝手に)共感します。
みんながみんな、企業や組織と戦う勇気を持てるわけじゃない。そして「悪者」にされる側にもそちらの「正義」があり、家族がいるはず。でも最近は、「悪」と「善」、どちらかはっきりしないと許されないような空気が日本全体に広がっている。
そんな今の社会が生き辛いと思っている人の居場所を創るのもエンターテインメントの大事な役割の一つじゃないかなと思う。
藤井監督らしい品格のある高い視点からの映像はやはり自分には刺さる。清原果耶の瑞々しさも胸を打つ。中盤の、善悪、昼夜を対比しながら描写するシークエンスは見事な映像の繋ぎで、編集担当のセンスの良さも感じた。
ただ映像の流れが全体的に緩やかなので、作品のテーマに色々思いを馳せるにはちょうど良いのだが、本当に緊張したいところでそれができなかったという、なんか、歯がゆさが残った。締めるところは締めて120分以内に収めて欲しかったかな…
ヒューマンドラマが冗長になるのは邦画にありがちな悪癖で、思いをすべて吐き出したいという気持ちはわかるのだが、捨てる勇気も必要だと思う。