ノラネコの呑んで観るシネマ

デイアンドナイトのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

デイアンドナイト(2019年製作の映画)
4.4
善と悪はどこからやってくるのか、私はどちらにいるのか?
阿部進之介演じる主人公が、正義を巡って葛藤する。
この場合の正義は、法律的な白黒二元論ではなく、道徳的な常識でもない。
正義は大切な人を守る。
正義は大切な人を幸せにする。
それは本当だろうか。
もし正義を貫くことで、誰もが不幸になったとしたら、それは本当に価値ある正義と言えるのか。
阿部進之介演じる主人公は、父の自殺で郷里に帰ってくる。
父は大手自動車会社の企業城下町で、リコール隠しを内部告発し、村八分にされて自殺に追い込まれたのだ。
昼は児童養護施設を経営し、夜はその運転資金を作るために、あらゆる犯罪に手を染める安藤政信と知り合った主人公は、彼の“仕事”をしながら父の正義を追求しようとする。
「・」も「スペース」も無い、一続きの「デイアンドナイト 」が、正義と悪の不可分を表す。
現実の世界は、池井戸潤の小説みたいには割り切れない。
我々は皆、昼でも夜でもない灰色の世界にいて、それでも自分の中に信じられるものを形作り、生きていかねばならない。
後半の展開なんかは、結構荒っぽくて強引なんだけど、フツフツ煮えたぎる異様なパワーのある映画。
主演の阿部進之介が原案・企画、今回は出演無しの山田孝之がプロデュース兼共同脚本と、役者が裏方でも中枢にいる映画は珍しく、実際キャラクターは皆立っている。
中でも灰色の世界で強烈な色を持つ、清原果耶が素晴らしい。