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デイアンドナイトのEDDIEのレビュー・感想・評価

デイアンドナイト(2019年製作の映画)
4.6
「善」とは「悪」とは?父の死の真相を探る主人公が対峙する社会の不条理。
脚本、演出、キャストが見事に混ざり合い邦画の傑作を生み出した!

以下核心には触れないように気をつけていますが、若干ネタバレ要素も含んでいますので、読まれる方はご注意を。

父の死をきっかけに故郷に戻ってきた主人公・明石(阿部進之介)。父の遺した工場跡に出向くと謎の人物・北村(安藤政信)に出会ったことで、明石の運命は大きく変わっていきます。
本作の素晴らしいところは、飽きさせない構成・演出。山田孝之脚本・プロデューサーということが前面に出ていますが、監督は藤井道人です。私は伊坂幸太郎作品の実写化「オー・ファーザー」ぐらいしか観たことないのですが、タイトルにもなっている「デイアンドナイト」の対比を、善と悪の対比のように交互に見せる演出は見事でした。
昼はまるで平和ないつも通りの日常を過ごしているのに、夜は目まぐるしい非日常の連続。本作のテーマともなっている「善と悪はどこからやってくるのか」これを鑑賞者に深く考えさせるきっかけともなる場面ではないでしょうか?
冒頭にも書いた社会の不条理。これをまざまざと見せつけられ、確かに我々の生きている現実社会も同様だなと考え込ませられました。

そして、明石は北村がオーナーを務める児童養護施設「風車の家」で出会う少女・奈々(清原果耶)との出会いにより、善と悪の間で揺れ動いていた自らの感情に迷いをなくすきっかけともなります。
「正しいって何?」そんな問いかけにも簡単には答えが見出せないまま、幸せな子どもたちの生活を維持させるために犯罪にも手を染めていく明石。

そんな正しいとも誤っているとも言えない生活を続けながら、父の無念を晴らすきっかけを手にします。
しかし、結末は不条理。地元大手企業の社長・三宅(田中哲司)は一筋縄ではいきませんでした。

なんとも無念というか、それこそ正義とか悪とか、何が正しいとか正しくないとか、ひと言で言えない無情さがあります。
この映画の素晴らしいところって、明石や北村たちは犯罪に手を染めており、必ずしも正しいことをしているわけではないのですが、それでも彼らを100%責めることができない人間心理のつき方と世の中の慣習や法律が存在する点です。
だからこそこの映画を観る方は、善と悪、正しいという言葉の意味を改めて考えるきっかけとすることができます。

正直私の中で2019年邦画ランキングをつけるなら、3/24時点で暫定1位です。それぐらい響くものがあったし、観て良かったと感じる映画でした。劇場公開はかなり限られていますが、機会があるならば観てほしい作品です。

さて、あとは役者陣の演技がどれも素晴らしく惹きつけられました。

・阿部進之介
長編映画初主演らしいですが、本作企画・原案から関わっていたとのことで、何が伝えたかったのかよく理解して演じられていたんでしょうね。昼と夜の対比、序盤と中盤〜後半にかけての表情の変化、素晴らしい役者だなと感じました。「キングダム」にも出演されるようなので、注目して観たいと思います。

・安藤政信
本作のキーパーソン。なぜ児童養護施設を運営しているのか、なぜ危ない犯罪行為に手を染めているのか、本心を見せない怪しい雰囲気に釘付けでした。彼の正体、秘密を知ったときに本作の本質を理解できた、そんな気がしました。

・清原果耶
いやぁ素晴らしい女優さんですね。まだ17歳!?悲しい過去を持つ高校生を演じますが、誰も信じない冷淡な表情、しかし徐々に明石に心を許す優しい表情、真実を知ったときの激昂の表情、それぞれの表情の変化をうまく演じきっていましたね。今後が楽しみな女優の1人です。

・山中崇
明石の父の会社の元従業員。この人ってホント嫌な役やるのうまいですよね。退職金を明石にせびりながらも、金を手にした途端の変貌とか凄かったですよ。

・田中哲司
本作で私が一番印象に残った俳優。他にも映画、ドラマと引っ張りだこな彼ですが、本作での存在感は半端なかったですね。ホント性格悪いというか、でも彼の言ってることも間違ってないんですよね。確率論の話とか。一度は明石にしてやられるわけですが、明石を追い込んでいく策略は社会のドンとしての強さと社会の不条理を見せつけられました。いやぁ迫力あったなぁ!

本作の凄いところのもう一つはそれぞれの主要キャラのバックボーンがしっかりしていることでしょうか。それを少しずつ明かしていきながらも、無駄な設定は一つもないので、物語にいいエッセンスを与えていました。
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