TAK44マグナム

ぼくらと、ぼくらの闇のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ぼくらと、ぼくらの闇(2017年製作の映画)
3.6
あの日の2人はもういない。

ある事件をきっかけにして、親友同士の友情が壊れてゆく様を描いた青春スリラー。


学校アルバムの写真を見ては、どの女子生徒がエロいかなどとバカな事ばかり駄弁っている中学生2人組のザックとジョシュ。
ジョシュは日本刀を持ち出して、いけすかないが友人のダリルと遊んでいる時に誤ってダリルを刺し殺してしまう。
どうしたらいいのか分からなくなったザックは、とりあえず死体を森に隠し、日本刀も穴の中へと捨てる。
秘密を共有するようになったザック達であったが、ジョシュが学校を休むようになり、ザックは言い知れぬ不安に苛まされるようになる。
ずっと片思いであったアリソンからのアプローチも、嬉しいはずなのに気持ちが弾まずキスも出来ない。
そんな重苦しい日常が続き、ついに破局を迎える日がやってくるのであった・・・。


ボンクラだけど気の良い中坊が、日本刀なんかで遊んだばかりに引くに引けない事態に陥って衰弱してゆく様子を丹念に描き、安い友情など簡単に壊れるものというシビアな現実を突きつけてくる、言うなれば趣味の悪い「中学生日記」。

重要な選択を間違えてしまうと後戻りのできない闇へと堕ちてしまいますよ、というありがたい教えでもあります。
事故ではあるのだから、ダリルが死んでしまった時点で警察を呼ぶべきだった。
でも、それが出来ない。
平穏な日常を壊してしまうから。
その気持ちはよく分かります。
だから、無かったことに出来ないかなと無駄な抵抗をする彼らの行動に説得力はあります。

しかし、そのおかげで、彼らはもっと苦しい地獄へと堕とされてしまうのです。

なんとか打開しようと抗うザック。
対象的に、自分の殻に閉じこもり、出した答えが「どうせダメなら全部ぶっ壊してしまえ」と、
勝手にもほどがあるジョシュ。
かくして、そこに確かに存在したはずの友情という絆は、いとも容易く消滅してしまうのでした。

序盤のバカやって楽しそうなザック達が印象的なだけに、終盤の展開はものすごくヘビーでした。
キラキラしていた登場人物たちの目が、最後にはみんな虚ろになってしまうのです。
なんでこうなった感がすごい。
日常が唐突に終わりを告げる系の映画は、どれもこれも自分に重ね合わせてしまってショッキングですね。

オープニングとエンディングが、ザックやジョシュでなく、アリソンを描いているのは、ザック達を傍観することしか出来なかったアリソンの姿に、観ているこちら側が自分を投影するためのギミックなのかな?と思いました。


結局、何も出来やしない。
壊れるものは壊れる。
でも、そんなことを繰り返しながら、人生は強引に前へと進んでゆくのです。
その推進力となるのが愛情や友情であるのなら、それは大切にしないといけません。
捨てるのは簡単。
失うと二度と戻らないとしたら?


「映画秘宝」でナマニクさんが紹介されてて、ネトフリに入っているのを見つけたので早速観てみました。
無残で、哀しくて、切ない、青春残酷物語。
おさえた描写な上に、話が大きく動くまで間があるので全体的におとなしい作風。
疲れた時に観るのは、少々ダルくてキツイかな?
合う合わないがあるかもしれませんが、ことの大小は別として誰にでも似たような経験があるかと思いますので、胸にグッとくるかもしれませんよ。


NETFLIXにて