るるびっち

スターリンの葬送狂騒曲のるるびっちのレビュー・感想・評価

スターリンの葬送狂騒曲(2017年製作の映画)
2.8
映画の構造で権力闘争を見せていない所が、作為的でないリアルさもあるのだが、逆に伝わりづらい。
構造で見せるとは、例えば手紙の争奪戦をするとかだ。
スターリンを死に追いやった可能性のあるピアニストの手紙は、フルシチョフ抹殺の切り札になる。ならばライバル側とその手紙の争奪戦になれば、映画としてもコメディとしても解りやすく、互いのライバル関係を示せる。
そういう工夫を敢えてしなかったのか?
あまり劇的な展開には仕組んでいない。

同じく、ある党員の妻を保釈して恩を売ることで自陣営に引き入れようとするライバル側。しかし党員自体は妻の帰還をあまり喜んでいない。この辺りも描写に過ぎず曖昧だ。
実は党員には愛人がいて妻の帰還は却って迷惑だ。結果ライバル側の策は裏目に出てフルシチョフ有利に逆転する、とかなら解りやすい。
幾らでも勢力関係を面白く見せられる素材があるのに、コテコテのコメディにしたくなかったのか、そうした映画的構造で処理することはせず、あくまでスターリン体制時のブラックさを人々の反応や台詞で示すに留まっている。

恐怖政治を諷したちょっとしたジョークが続くだけ、構造がないまま2時間も持つほど映画は甘くない。工夫が足りないように感じた。
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