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馬を放つのkyokoのレビュー・感想・評価

馬を放つ(2017年製作の映画)
3.8
夜な夜な馬を盗んでは野に放つ「ケンタウルス」と呼ばれる男。
人間の翼だった馬を、今は人間が支配するようになってしまった。
馬を放つ行動は、馬の尊厳を取り戻すため。

50歳の時に親戚から嫁としてあてがわれた聾唖の女(でもでもこの奥さんがとっても美人!)と、5歳になるのにまだ言葉を発しない一人息子(この子もものすごくかわいい)のことを心から愛し、穏やかに暮らしているのに、周囲は「マクシム」屋を営む女との関係を口さがなく噂する。

キルギスの国に広がる雄大な景色に反して、男が住む世界は狭い。
男は(その妻も、マクシム屋の女も)ここでは「異端」の存在。
異端を嫌うこの世界から飛びだして解放したかったのは、馬ではなく自分だったのではないか。
かつては映画技師だった男が、いつの間にかモスクに取って変わられた映画館で映写機を回す顔は、まるでフィルムの中で疾走する馬に自分自身を重ね合わせているかのようだ。

……と、こんな感想を持ちながらの鑑賞だったが、資本主義と民族の文化や誇りが失われることへの警鐘、イスラムの文化的侵略など、後に読んだ監督インタビューで分かったことも多い。これから観る方はこのインタビューを事前に読むとより解釈が深まるのでオススメ。
(http://hotakasugi-jp.com/2018/03/14/interview-centaur/)

ところでこの「マクシム」という飲み物。なんか分からんが美味そうだなと思って調べてみたら、「大麦と小麦粉と羊の脂などを醗酵させたドリンク」だそうだ。……なかなか素人にはハードルが高そうw
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