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緑の牢獄のmasayaのレビュー・感想・評価

緑の牢獄(2021年製作の映画)
4.2
知られざる西表炭鉱。坑夫は台湾など島外から集められたが、借金や麻薬漬けになり島に釘付けにされ、多くがマラリアに倒れた。二度と出られない「死人の島」と呼ばれた西表島で、炭鉱閉山後も島に残った台湾からの請負人の娘・橋間おばあの追想から消えかかった歴史の暗部を紐解く。
養父母に連れられ子供時代に西表島にやってきたおばあの語りは台湾語と八重山ことばが自然に入り混じる。台湾の同胞に炭鉱の仕事を斡旋し、炭鉱で世話をしていた養父。戦後、一家は台湾に帰る場所が無くなっていた。島に定住し建てた墓には台湾と日本の名字が続けて刻まれる
移住して80年、おばあは今でも島の「タイワンナー」として生きる。経済至上主義、植民地経営の破綻、大きな主語の文脈に巻き込まれて捻じ曲げられたままの個人の犠牲が、彼女の人生の終わりと亜熱帯の陽射しを浴びて炭坑遺跡の風化するままに、忘れさられようとしている
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