マクガフィン

モリーズ・ゲームのマクガフィンのレビュー・感想・評価

モリーズ・ゲーム(2017年製作の映画)
3.0
ポーカールームの女性経営者、モリー・ブルームの半生の実録劇。

冒頭の、冬季五輪最終予選でのモーグルの模様を、雪斜面の角度・気温・採点を記号や数字化して表すことは、経営やポーカーなどに重要な数字の大切さを表し、滑る目測ルートやアクシデントは人生のメタ的にも。膨大なセリフを矢継ぎ早に繰り広げるスタイリッシュで軽快なタッチな編集はスコセッシ風な疾走感に。

モリー・ブルーム(ジェシカ・チャステイン)の一人称視点映画(?:語り手がモリーだったか忘れた)だが、一人称視点で映画化する課題の良い所と悪い所がそのまま浮き彫りになる雛型的な結果に。
実在のモリーが自身のその経験を語っているので、生々しい臨場感を感じて、一人称の利点を活かされて良い。反面その視点がモリーで固定されてるので、物語の変化を付けづらく一本調子になり、他のキャラの構築や魅力が弱すぎることで、一人称の欠点になり群像劇に当てはまらなく、それがスコセッシ映画と決定的に違う。
また、一定なテンポは緩急が必要で、テイストも重厚さは感じないので、もっとコミカルを挟んだりして、エンタメ要素も取り入れることも必要だったのでは。話法もイマイチ伝わらないことは、字幕だけではない筈。

アメリカでも州によって異なると思うが、プライベートカジノは合法だが、運営側が手数料(rake)を取ると違法らしく、合法な運営をするが元銭の資金繰りが難しいので、手数料を取るかどうかの葛藤に。
そんな悩みを持つのだが、美人で頭脳明晰なうえに凛とした佇まいで、感情の変化が希薄なことも相まり、高利貸しで破産した人への理非曲直がないキャラなので感情移入は至らず。バイタリティの一部は麻薬の力で、麻薬に対しては全く抵抗がないのもどうか。

幼少の頃に毒父のスパルタでトラウマを負う影の背景もあり、後の高額ポーカーの経営者になった要因にも。客が男ばかりなことがメタ的でヒントに。

前半のカジノルーム経営時のキーとなるプレーヤーXも魅力に欠けて、プロットも中途半端に。中盤以降の弁護士とのやり取りも、似たような会話や、やり取りがループする冗長で、弁護士との絆のようなことが芽生える関係も弱い。
変に終盤の父親が美化されて、モリーのメンタルの根幹の強さは、毒父に鍛えられた賜物のようにも感じ、モーリーの成長やトラウマからの解放のカタルシスも弱い。

このように書くと散々のようだが、ジェシカ・チャステインの佇まいは美しく、法定準備シーン以外は飽きが少ない。栄枯盛衰の実録は、バイタリティが溢れていて見ていて楽しくキャラも魅力的で、題材が良いだけに余計に残念で、140分は長い。100分位に纏められたはずでは。