エクストリームマン

モリーズ・ゲームのエクストリームマンのレビュー・感想・評価

モリーズ・ゲーム(2017年製作の映画)
3.7
You know what makes you feel okay about losing? Winning.

アーロン・ソーキンの語りをジェシカ・チャステインで、というところは新鮮味があって面白かった。同時に、彼の脚本に耐えうる映像を構築する難易度の高さみたいなものも垣間見た気がする。グレッグ・モットーラ的な冷静さというか、距離の取り方ができる監督が撮ってこそ、アーロン・ソーキンの脚本は本来の切れ味を発揮できるのではないか。とはいえ、画面の端々、そして何よりクライマックスの性急な語りから伝わる彼の並々ならない思い入れから察するに、モリー・ブルームはいつも以上に冷静ではいられない題材だったのだろう。

パンフレットを読んで知ったことだけど、本作はモリー・ブルームの執筆した本が原作というよりは、その本を映画化しようとした彼女から話を聞き出したアーロン・ソーキンが描くモリー・ブルームの物語である。ポーカーゲームを運営することでのし上がっていくその意味や、父親との関係、「その秘密を喋りさえすれば大金と自由を手にできたのに、それをしなかった」ことに高潔さを見るのは、アーロン・ソーキンの視点である。次第に依頼人であるモリーに共感し、最後には力強く共に立つことになるチャーリー・ジャフィー(イドリス・エルバ)の態度やセリフは、アーロン・ソーキン自身の所作であり声であり、映画制作の道行きそのものだったのだ。彼の演出を見ても、アーロン・ソーキンののめり込みようが見て取れる気がする。

当たり前のように、はじめから独立した個人であるように見えるキャラクターとして、もはやジェシカ・チャステインの右に出る者はいない。法的に窮地に立たされていようが、金がなかろうが、そのことで弁護士に助けを乞うていて尚、ヒロイン(この場合、大方の場合異性である)を微塵も必要としないところにモリー・ブルーム=ジェシカ・チャステインの苛烈なまでの独立性がうかがえる。

モリーに苛烈であることを強いたパターナリズムの権化かと思いきや、しばらく会わないうちにやたらと物分りがよくなった父(ケヴィン・コスナー)は、『ゼロ・グラビティ』の主人公:ライアン・ストーン(サンドラ・ブロック)が極限状態で再会するマット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)の幻影にも似ていて、彼との再会はどこかお伽噺めいて見えた。