TakashiNishimura

海を駆けるのTakashiNishimuraのレビュー・感想・評価

海を駆ける(2018年製作の映画)
4.2
インドネシア・スマトラ島のバンダ・アチェの海岸に男(ディーン・フジオカ)が打ち上げられる。2004年のスマトラ沖地震で津波被害を受けたその土地には、日本人女性(鶴田真由)とその息子(大賀)、息子の友人や遊びに来た従姉妹が暮らしている。記憶を一切持たないその男は、やがて不思議な力を発揮しはじめるが…。

極めて寓話性の強いファンタジーである。高評価。

バンダ・アチェでは、津波で打ち上げられた大型の漂着船がそのまま放置されている。あまつさえ観光資源になっている。漂着船以外にも、津波の被害を物語る物証が撤去されること無くあちこちに残っている。それどころか、太平洋戦争中に日本軍が設置したトーチカも残っている。人々は負の歴史や天災の爪痕が積み重なった土地で、それらの物証と隣り合わせに生きている。そして、その上で、前向きに生きている。「負の記憶」や「大自然の猛威」、および「それらを風化させないこと」に対する向き合い方が、日本とは違う気がする。

ただ、「大自然の猛威」への向き合い方に関しては、少し前の日本に似ている。

自然は恩恵をもたらすと同時に被害をもたらす。優しくもあれば残酷でもある。そこに理由はない。人間の都合など意に介さない。しかも太刀打ちできない。そんな自然に対して、日本人は畏敬の念を持って向き合ってきた。だから荒ぶる神として敵わない相手として崇め恐れた。本作に登場するインドネシアの人たちも、そういうモノとして自然に対峙しているように思う。

寓話という体裁をとってはいるが(あるいは、とっているからこそ)、テーマ的にかなり踏み込んだ作品。