荒野の狼

パパはわるものチャンピオンの荒野の狼のレビュー・感想・評価

4.0
2018年の111分のプロレスラーが主人公の映画。新日本プロレス所属の多くのレスラーが出演。本作は、スポーツエンタテインメント映画に相応しく、最終版のプロレスの試合で最高潮の盛り上がりとなるが、それまでのドラマの部分は複数の試合のシーンも含めて、最後の試合の一部のように見ることができる。プロレスの大試合は、そこに至るまでマイクでのパフォーマンスや、複数の前哨戦、過去の戦歴なども含めて、準備されていくが、本作でも映画の場面の一つ一つが、最後の試合を盛り上げるための要素となっている。試合自体も、実際のプロレスのダイジェスト版を見ている感があり、手抜きのない試合は目の肥えたプロレスファンも納得の内容で、CGなどは一切ない格闘エンタテインメントとして楽しめる。欲を言えば、結末も含めて、ストーリーの全体が細部にわたるまで予想できてしまうことが、映画として、やや物足りない。
本作でレスラー以上に素晴らしいのが子供たちの演技で、主役はむしろ子供達といってもよい内容。親の職業に対する思いや、クラスの中での友情、淡い恋愛がよく描かれている。いじめのシーンもあるが陰湿になっておらず、本作を見て子供たちが学ぶところも多いと思われる内容となっている。
主演の棚橋弘至は過去に仮面ライダーの映画をはじめとする作品に出演歴があるが、本作でも安定した演技。棚橋は悪役(ヒール)レスラーのゴキブリマスク役であるが、リング内の動きは普段のプロレスと変わらない。トップロープからのボディプレスが得意技という設定も実際のプロレスラー棚橋と同じで、本作でみせる何度かのボディプレスも迫力は十分。本来はベビーフェイスの棚橋が、ヒールレスラー役として本作でみせるユニークな動きは、リングインした後にゴキブリのように這う動きで、短いシーンでしか見せないのが惜しいくらいの見事なもの。
出演場面が多い中で好演しているのが、棚橋の相棒の悪役レスラー役の田口 隆祐(りゅうすけ)で、実際のプロレスではヒールではなくベビーフェイスの田口だが本作では見事な変わりようをリング内ではみせている。その一方で、ドラマの部分では熱い内面が現れる演技がよい。
チャンピョン役のオカダカズチカは、実際のプロレスでも長年チャンピョンであり、本作でも実際のリングとかわらない動きとパフォーマンスをみせる。工夫が見られるのがリングに入るときのムーブでトップロープをつかんでその反動で宙返りしてリングインするが、これは若い頃の武藤敬司が行っていたものと同じでオールドファンには嬉しい。
プロレスファンには、映画製作時の新日本プロレスに所属している選手が多く出演しているのが魅力。現在は活躍しているグレート-O-カーンやマスター・ワトが冒頭に少しだけ映ったり、新日本プロレスを退団したKUSHIDAが田口のスパーリング相手としてヒップアタックを受けたりと、プロレスファンには細部が楽しめるシーンがある。
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