生まれてきた事、全肯定。
"Born This Way"
世の中全てのマイノリティとコンプレックスの持ち主に、どれだけの勇気と力を与えるだろうと衝撃だった、個人的な彼女との出会い。
いまやポップアイコンとして揺るぎない地位にまで登り詰めた歌姫、レディー・ガガの実像に迫るドキュメンタリー。彼女の5枚目となるアルバム「ジョアン」の制作過程と2017年2月のスーパーボウル出演に至るまで、1年に渡る密着取材。
「ジョアン」は従来の奇抜なルックスからの脱却とポップなダンスミュージックからカントリーを基調とした音楽的変遷が特徴で、本作の彼女も素の自分を曝け出すような言動が目立つ。
「脱いでもいい?」
プールサイドで数名と話していた時、彼女は不意に言った。その場に男性がいたってお構いなし。トップレスになりたきゃなる。彼女はそういう人だ。もう、生肉のドレスを纏って注目を集める必要がないのだ。
アルバム制作風景の中では、亡き伯母ジョアンへの想いを語る場面が印象的。
そして、スーパーボウルのハーフタイムショウに向けて徐々に高まる緊張感。
ステージの全てを把握していないとナーバスになるガガ。振り付けの変更も衣装の裏地も事前に知らされなければ、途端に不安になり、ややヒステリック気味に周囲に当たる。
強さと脆さの二つを持ち合わせた人よ。
ステージ上で、どれだけ強く拳を突き上げていても、裏では途端に泣きじゃくってしまう。心も身体も傷んでいる。
世界でトップセールスを誇り、
世界最大のステージを成功させ、
その後ガガは何処へ向かうのか。
楽曲でみんなを幸せにして、家庭を築きたい。なのに両立出来ない。涙ながらに吐露した彼女の夢が叶う日は来るのだろうか。
1日中、沢山の人々に囲まれていたのに、
夜になれば誰もいなくなって独りぼっち。
そう言って彼女は静かに溜め息をついた。
成功とは裏腹の孤独。
いや、これも成功の代償か。
それでも、彼女の音楽には嘘がない。
だから好きだ。
どうか、これからも自分を労り、慈しみ、健やかに歌い続けて欲しいと切に願う。