青いむーみん

被ばく牛と生きるの青いむーみんのレビュー・感想・評価

被ばく牛と生きる(2017年製作の映画)
4.0
ペットへの愛と家畜への愛はどう異なるのか。食用に育てられた動物が食用にできなくなれば生かす意味がなくなるのか。社会的沈黙で押し潰されそうな”生”を問う映画だ。

福島で畜産農家を営む四組の数年前の動向というのが基本線。四組ともそれなりに歳は召されていてそこに留まること、通うことが何を招くのか理解されている。あの土地がどうなっていくのか理解されている。国や東電に何をやってももはや暖簾に腕押しなのも理解されている。しかし育てた牛を見捨てることは出来ない。売れない、金のかかる、管理も大変な動物でもここに置いて去ることはできない。
人間の”情”の問題だ。情は測ることはできない。ペットの危険区域外への持ち出しを許可した政府からするとペットへの愛と、家畜への愛は異なるのだろう。ペットは食べないが家畜は食べる可能性があるから遺伝学上危険ということだろうか?それならそれで摂食の禁止を条件に入れればいいだけだ。彼ら畜産農家の愛情を軽んじているのがよく分かる。
この問題は時間が経てば消える。存在すらなかったかのように消えてしまう。高齢な方々の頑張り、粘りはなかったことにされてしまう。それをこういった形で残した映画は価値のあるものだと思う。

行動派でちょっと暴走気味な弟吉沢正巳さんとクールで悔しい感情を秘めている姉静江さんの姉弟が非常に印象深かった。他の方々もキャラが立っていて重いテーマのドキュメンタリーにも関わらず観易かった。