磔刑

アナと雪の女王/家族の思い出の磔刑のレビュー・感想・評価

3.2
「笑う王族、踊る平民」

大前提である本編の『リメンバー・ミー』の前座と言う役割上、複雑なストーリーや鑑賞後に観客の意識が残るような作風ではその役割を果たせない為、ノリと勢いを重視したキャラクター性に比重を置いた内容となっている。なので良くも悪くもその役割を果たしているだけでも合格点ではある。

しかし無粋ではあるがあえて内容について批評したいと思う。
まず私が一番疑念に感じたのはエルサが未だに過去のトラウマに囚われている点だ。姉妹の遺恨と過去のトラブルは前作で解決済にも関わらず、この期に及んで物語の出発点を過去の柵に据えるのは一作目のその後、エルサとアナの“今”を描く行為とは真逆の行いに他ならない。短編ではあるが続編としての役割も兼ね備えている作品なだけに、今作の魅せ場が一作目のオマージュなのも含め守りの姿勢が強い作風にはガッカリさせられた。
加えて葛藤の出発点である王族と市民の幸せのあり方の齟齬がなし崩し的に解決している点も落胆した。家族とのんびりクリスマスを過ごしていた市民達はオラフ捜索に半ば強制的に駆り出され、最後はエルサとアナ、オラフがハグしてめでたしめでたしって、オマエらは良いかもしれないが一市民からすりゃたまったもんじゃねぇし、知った事じゃねえよ!!最初にあった王族と市民の溝は全然埋まってねーよ!って感じで一作目と同様に三流の少女漫画じみた超主観的なストーリーで「あたし達が幸せなんだから、あなた達も幸せでしょ?」って世界観で、客観的に観れば馬鹿馬鹿しさ極まりない内容である。
その点一作目は今作と同様の目に余るほどの脚本の粗さはあるものの、楽曲がそれを見事にカバーしていたので観るに値する出来となっていたが、今作の楽曲は取り立てる程でもないので前作で有耶無耶にしていた悪い点が露呈していると言える。

冷静に点数を付けるなら☆2.1ぐらいが妥当なのだが、最初に記した通り本編の前座の役割が大きいのだからお気に入りのキャラクターの一挙手一投足にキャーキャー言いながら鑑賞するのが正しいので、エルサの全く成長を感じさせない人物像は別としてもその愛らしいルックスだけ観てれば+1.0位の価値が有る。残りは猫ちゃんの可愛さが加点された結果である。最初に記した大前提が何よりも優先されるので大真面目に内容の粗を指摘する方がどうかしてるのだが、『アナと雪の女王』の続編の出来が中々不安になる内容ではある。
あとクリストフの「トロール流のクリスマス見せてやるよ」みたいなセリフがド下ネタに聞こえて仕方なかったんですけども、その時点で自分はディズニーアニメを観る様な歳ではないのかもしれない。
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